著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

雪国、とくに東北地方にお住まいのドライバーにとって、冬場の悩みのタネのひとつが「車のサビ」ですよね。

道路に撒かれる融雪剤(塩化カルシウムなど)は、雪や氷を溶かしてくれて助かる反面、車の金属部分、とくに見えにくい「下回り」のサビを強く進めてしまいます。

ディーラーや車屋さんに行くと、😳「下回りの錆止め塗装、やっておいた方がいいですよ!」と勧められることも多いと思います。

その一方で、こんな疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

🤔「本当に必要なのかな?」

🌀「費用も結構かかるみたいだし…」

😥「周りはやってない人も多いけど、大丈夫なのかな?」

とくに、最後のひとつ。

周りがやっていないから自分もやらない、でいいのか。

それとも、自分だけが手を抜いていることになるのか。

ここがはっきりしないままだと、冬が来るたびに同じところで迷うことになります。

✅ 結論からお伝えします

やらない、と決めて大丈夫です。

「乗り潰すつもりだから」という理由でも、それはじゅうぶんな理由になります。

サビで困るのは、安全ではなく車検のほうです。

ただ、条件がひとつだけあります。

冬のあいだ、月に1回でいいので、下回りに水をかけること。

そして、いま乗っているお車と、次に買う新車とでは、答えが変わります。

ご相談者さまが聞きたかったのは、2つでした

まずは、いただいたご相談です。

知人と車の話になり、「下回りの塗装をした方がいいか」という話題が解決しませんでした。

私の住む地域は雪深く、融雪剤が撒かれます。

車屋さんからは「下回りに錆止めを塗るように」と言われますが、必要かどうか、頻度はどうかが分かりませんでした。

話し合いの場には10年くらい乗り続ける人が多数で、乗り潰すから売るときの状態はあまり気にしない、という流れでした。

車屋さんからすると、この考えはいかがでしょうか。

錆びないにこしたことはありませんが、他のトラブルを誘発するなど見落としがあれば教えてほしいです。

このご相談、ふたつのことを聞かれています。

ひとつは、「乗り潰すつもりなら気にしなくていいのか」を、車屋さんの側から見てどうか。

もうひとつは、「サビが、サビ以外の何かを引き起こすことはないか」

どちらも、当時お答えしました。

順番にお話ししていきますね。

まず、下回り塗装には3つあります

ひとくちに「下回り塗装」「錆止め」と言っても、中身はいくつかに分かれます。

効果も持ちも、まったく違います。

① 厚塗りタイプ(ノックスドール、スリーラスターなど)

新車のときや購入時に、専門の業者さんやディーラーで施工することが多いタイプです。

厚みと弾力のある塗膜をつくって、塩分や水分、飛び石から下回りを物理的に守ってくれます。

防錆の効果はこの3つのなかでは高く、しっかり守れる印象です。

もし私がやるなら、これを選びますし、実際に施工したこともあります。

② シャシブラック系(車検のときに塗られる黒い塗料)

正直なところ、本格的な防錆効果はあまり期待できません。

塗膜が薄く、すぐに剥がれてしまうことが多いからです。

黒々として見た目がきれいになる、いわばお化粧のようなものと考えると分かりやすいと思います。

本気でサビから愛車を守りたい方には、あまりおすすめしていません。

③ 油膜・ワックスタイプ

ガソリンスタンドなどで「下回り防錆」としてメニューになっていることがあります。

一時的な効果はある程度ありますが、厚塗りタイプほどの持続性や物理的な保護力はありません。

飛び石による傷から出るサビには弱い、という弱点もあります。

あと、施工したあとのお車は整備のときに手がベタベタになるので、整備士さんからはあまり好かれない傾向があります(笑)。

何をするにしても、錆びる前に行う新車時がいちばん効果的です。

サビで困るのは、どんなときか

では、なぜ車屋さんは下回り塗装を勧めるのでしょうか。

理由はふたつあります。

ひとつは、見た目です。

ボディがきれいだと嬉しい、その延長線上で、下回りもサビでみすぼらしくないと嬉しい。

そういう気持ちがあるなら、やった方がいいと思います。

これは、立派な理由です。

もうひとつは、サビでフロア(床)やマフラーに穴が開くと、車検に通らなくなることです。

穴が開いた床を溶接で直すと、ディーラーではしっかり直してくれるぶん、一か所5万円ぐらいかかります。

もっと安く直してくれるところもあるかもしれません。

その修理費用をなくすために、先に錆止めをしておく。

下回り塗装が勧められるのは、そういう意味合いです。

サビで穴が開いても、それだけで危なくなるわけではありません

ここが、ご相談者さまが聞きたかったもうひとつのことです。

「サビが、サビ以外の何かを引き起こすことはないか」

ピゴス
ピゴス

サビって、見た目が気になりますよね。

でも「表面のサビ」「穴が開くサビ」は、別物なんです。

錆びてちょっと穴が開いたぐらいで、死ぬほどの事故に簡単にはなりません。

錆びたら危ないところは、メーカーもちゃんと対策していますので😊

車には、錆びたら危ない場所と、錆びてもすぐには困らない場所があります。

そして、危ない場所のほうは、メーカーが設計の段階で手を打っています。

ですから、下回りが茶色くなっていても、それがそのまま「危ない車」になるわけではありません。

もちろん、例外はあります。

大型のバスやトラックのように、過酷な使われ方を長い期間しているものは、稀に危険なところまでサビていることがあります。

毎日長い距離を走る商用のお車をお持ちでしたら、そこは点検のときに見ていただいてください。

ただ、ふつうの乗用車で10年前後を乗る、という使い方なら、そこまで心配しなくて大丈夫です。

困るのは「安全」ではなく「車検」のほう。

そう覚えていただければと思います。

「周りはやっていない」は、体感として正しいです

昔の車は、雪の多い地域では10年経たずに下回りに穴が開くこともありました。

でも、最近の車の防錆技術は、そのころとは変わっています。

メーカーも、下回りに錆びにくい鋼板を使ったり、防錆処理をしたりしています。

ここで、ご相談者さまの話し合いの場を思い出してみてください。

10年くらい乗り続ける方が多数で、「乗り潰すからやらない」という流れになっていた、とありました。

みなさんが肌で体感していて、それで「なくても良いのでは?」という結論に至っている。

それはたぶん、まだ車が新しいのにサビで穴が開いて困った、というケースにそんなに直面していないからだと思います。

つまり、その体感は当たっています。

周りがやっていないのは、手を抜いているからではありません。

実際に、困っていないからです。

試しに、何もしないでみてください

ですので、私の考えはこうです。

愛車をできるだけきれいに乗りたい、という想いが特別にあるわけではないのなら、特別な処理は何もしなくていいと思います。

試しに何もしないでみて、10年以上とか、満足に乗れるのであれば、今後もその方法でカーライフを送っていただいていいと思います。

錆びてみすぼらしいところは、出ます。

でも、表面上なだけのことも多いんです。

「やらない」は、決められる選択肢です。

そして、10年後にご自身のお車を見て、それで満足できているなら、その判断は正しかったということになります。

答え合わせは、ご自身の車がしてくれますよ。

やらないと決めるなら、条件がひとつあります

ただし、まったく何もしないのと、これだけはやるのとでは、差が出ます。

それが、下回りに水をかけることです。

サビの原因は、雪そのものではありません。

道路にまかれる融雪剤の、塩分です。

ですから、塩分がついたら早めに洗い流す。

それだけで、下回りの持ちは変わってきます。

私自身も、以前はノックスドールなどを施工したことがあります。

でも結局、冬場に意識して下回りを水で洗い流すだけで、たいして錆びないことに気づいてしまいました(笑)。

頻度は、2週間に1回、せめて1か月に1回ぐらい流せれば、だいぶ違います。

高速道路や幹線道路で融雪剤をがっつり浴びた日は、帰ってすぐか、数日のうちに流せると理想です。

これだけで、10年持つのが15年持つぐらいの違いは出てくるような気がします。

ぜひ、ご自身のお車でも実験してみてください。

いつ洗うのが効くのか、春先はどうするのか、費用で比べるとどうなのか。

洗い方と費用の具体的なところは、こちらでまとめています。

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洗うのが難しい方と、次に新車を買う方へ

「冬に外で水を使うなんて無理」という方も、もちろんいらっしゃると思います。

その気持ちも、よく分かります。

そもそも、庭やホースがある住まいでないとできません。

洗車機の「下回り洗浄」オプションで、じゅうぶんです

そういう場合は、洗車のついででかまいません。

  • ガソリンスタンドなどの洗車機で「下回り洗浄」のオプションを付ける
  • コイン洗車場の高圧洗浄ガンで、下回りに水をかける

このどちらかで大丈夫です。

特別なことをする必要はありません。

水で塩分を流すことが目的ですからね。

洗うこと自体が難しい地域にお住まいの方は

それも難しい環境の方――たとえば、洗車をしていると凍ってしまうような地域にお住まいの方は、話が変わります。

その場合は、環境を考えて、ガッチリした錆止めを錆びる前にやっておく、という選択肢も損はしないと思います。

両方やれれば最強ですが、手間をかけられないなら、そちらに寄せるという判断です。

次に新車を買うときは、話が変わります

そして、次に新車を買うとき。

錆止めがもっとも効くのは、錆びる前です。

ですから「いま乗っている車は洗って、次に買う新車には塗る」という組み合わせは、とても理にかなっています。

ピゴス
ピゴス

ただ、正直に申し上げます。

私は、特定の錆止め剤を「これがおすすめです」と言えるほど詳しくないんです🙇

私が施工したことがあるのは、ノックスドールとスリーラスターで、どちらも膜厚のある防錆塗料を吹き付けるものでした。

お店選びで、ひとつだけ

お店選びについて、ひとつだけ。

下回り塗装も、洗車やコーティング、板金塗装と同じで、職人さんの仕事です。

誰がやるのか、どのお店がやってくれるのかが見えるところにお願いすると、満足度が高いと思います。

「うちはマフラーやアンダーカバーを外して、ガッチリやっています」というように、こだわりを話してくれるお店だと、やった甲斐も出てきますよ。

ちなみに、ノックスドールは工具屋さんやネットでもスプレー缶が売っています。

仲の良い整備工場があれば、車検やタイヤ交換のときに渡して「剥がれているところに軽く吹いておいてください」とお願いするのも良いかもしれませんね(もちろん有料のつもりで)。

「サビてますよ」と言われたときの、聞き方

車検などで「下回り、サビてますね」「錆止め塗っておきましょうか?」と言われたら。

ここで見るのは、塗るか塗らないかではありません。

どう説明してくれるか、です。

「サビてるから塗りましょう」だけなら、まだ判断の材料が足りていません。

一方で、「この部分のサビが進むと、こういうことになります」と、場所とリスクをセットで話してくれるなら、そこは深掘りして聞いてみる価値があります。

答えそのものより、どう答えてくれるか。

そこに、そのお店があなたのお車に向き合っているかが出ます。

ちなみに、タイヤ交換のときに勧められやすい「ハブの錆止め」も、やるべきかどうかは同じ考え方で判断できます。

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塗るかどうかより、優先順位のほうが大事です

最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことを。

カーライフもですが、100点を取ろうとしなくていいんです。

そして、人それぞれの80点があります。

オイル、タイヤ、ブレーキ。

限られた時間とお金のなかで、どれを先にやるか。

その優先順位を決めて、しっかり整備しながら乗っていければ、それでじゅうぶんです。

あくまで私の感覚ですけれど、下回りの錆止めは、その優先順位のなかで上のほうではありません。

同じお金を使うなら、オイルやタイヤのほうが、お車は長持ちすると思います。

やらないと決めた方は、そのぶんを別のところに回してください。

それは、手抜きではなく、選択です。

逆に、やると決めて、ご自身の手で塗ってみたいという方もいらっしゃると思います。

その場合にいちばん大変になるのは、じつは塗る作業ではありませんでした。

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錆止めのメニューごとに、やる・やらないを整備士目線で整理した記事もあります。

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まとめ|やらない、と決めていいんです

  • 「やらない」は、決められる選択肢(乗り潰すつもりなら、なおさら)
  • サビで穴が開いても、それだけで危なくなるわけではない(困るのは安全ではなく車検)
  • 周りがやっていないのは、実際に困っていないから
  • ただし条件がひとつ=冬のあいだ、月1回でいいので下回りに水をかける
  • 洗えない環境なら、次に買う新車のうちに錆止めを(錆びる前が効く)
  • 車検のシャシブラックは、ほぼ見た目のため

毎年、冬が来るたびに同じところで迷うのは、しんどいですよね。

ここで一度、ご自身で決めてしまってください。

そして、その判断には自信を持っていただいて大丈夫ですよ。

✅ 愛車の防錆対策チェックリスト

  • ☑️ 冬のあいだ、月1回は下回りに水をかける(洗車機の下回り洗浄でOK)
  • ☑️ 融雪剤の道をたくさん走った週は、こまめに
  • ☑️ 春に融雪剤が終わったら、一度しっかり洗う
  • ☑️ 錆止めをやるなら、錆びる前(新車・購入時)に厚塗りタイプで
  • ☑️ 毎日長い距離を走るお車(商用車など)は、点検のときに下回りも見てもらう
  • ☑️ 「サビてますよ」と言われたら、場所とリスクを聞いてみる

ご相談者さまの、その後

このご相談には、続きがあります。

ご相談者さまから、こうお返事をいただきました。

私も体感で定期的に下回り洗浄しとけば大丈夫じゃない?って思っていたので自信がつきました(笑)

後は新車納入時にしっかり塗装しようと感じました!

やるか、やらないか、ではありませんでした。

いま乗っている車は洗う。

次に新車を買うときは塗る。

そういう組み合わせに、ご自身でたどり着かれています。

そして、大きかったのは、たぶんこの一言だと思います。

やはりやらなくてもいい!と私は自分の考えに自信を持てました(笑)

お渡ししたかったのは、たぶん、これなんです。

正解を配ることではなくて、ご自身がもう持っていた答えに、自信を持っていただくこと。

下回り塗装の判断で疑問や不安ある場合は、このページ下の「コメント欄」からお気軽にどうぞ(ニックネームもメールアドレスも要りません)。

なお、これから中古車を買う方で、掲載写真の下回りが傷だらけに見えて不安、という場合は、見るところが少し違います。

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【おまけ】サビが多い車でも、諦めなくて大丈夫

雪の多い地域のお車は、どうしてもサビが多くなりがちです。

そうすると、もう車は高く売れないだろうと諦めてしまう方がいます。

でも、そんなことはありません。

下の記事のやり方で、愛車の価値をしっかり引き出すことができます。

いつかの売却のために、ブックマークしていただけると嬉しいです。

今の車、いくらで売れる?愛車の価値を最大化する方法 車を乗り替えるか迷っている方、まずは車の価値を最大化する方法を知るだけでも、次のカーライフの計画がぐっと立てやすくなり、損せずに進める...

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【はじめに】損しないカーライフの歩き方|6つの章でわかる車の教科書車の維持費・選び方・買い方・保険・売却までを6つの章で整理した入門まとめ。元1級整備士×元ディーラー営業のピゴスが、20以上の記事で損しないカーライフへの歩き方を案内します。困った時に戻れる入口ページです。...

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それでは、損しないカーライフをお過ごしください🐧

ABOUT ME
ピゴス
ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、記事の下のコメント欄でいつでも承っております。ニックネームもメールアドレスも要りませんので、お気軽にどうぞ!