著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

修理の見積もりを前にして、ディーラーの担当の方が、少し申し訳なさそうに言う。

「コーティングは、保険では出ないと思います」

相手の方の保険で、全額直してもらえる。

そう聞いてほっとしていた矢先の、ひと言。

7年かけて、少しずつ塗り重ねてきた艶。

ぶつけられた側なのに、そこだけは元に戻らないのでしょうか。

✅ 結論からお伝えします

保険会社に相談してみるのは、「あり」だと私は思います。

保険の土台にあるのは「原状回復」という考え方です。

事故の前の状態に戻すのが基本なので、コーティングもその一部として認められることがあります。

ただ、施工証明書や保証書が手元にないと、そこから先は感覚のやり取りになりやすいです。

そのときに効いてくるのが、実は「車そのもの」です。

手をかけてきた跡というのは、プロが見れば分かるものです。

ピゴス
ピゴス

大事に乗ってきた方ほど、ここは引っかかりますよね

そう思われるお気持ち、すごく分かります

ここは遠慮せずに、聞いてみていいところだと思いますよ

今回いただいたご相談

いただいたご相談を、内容を編集したうえで掲載させていただきます。

被害事故における、相手方の保険会社の補償範囲について教えていただきたいです

状況
信号待ちで停車中に後方から追突され、物損事故(車対車)が発生しました

相手方の保険会社からは、修理費用を全額負担するという提示があり、ディーラーに修理を依頼しました

被害箇所
バックドアとリアバンパーで、どちらも交換が必要とのことでした

問題点
修理に伴い、コーティングの補償についてディーラーに確認したところ、「7年経過している車両の場合、保険でコーティング費用は補償されない可能性が高い」と言われました

私は新車購入時にコーティングを施工し、その後も重ね塗りを継続してきたため、車の艶や輝きを大切にしてきました

今回の修理後にコーティングが施されないとなると、車の外観を大きく損なうと感じています

質問
このようなケースで、保険会社に確認や交渉を行うことで、コーティングの費用も補償対象に含めてもらえる可能性はあるのでしょうか

車種
スペーシアカスタム(2017年式)

この度は追突事故に遭われ、大変な思いをされたことと思います。

大切にされていたお車に傷がついてしまったこと、心中お察しいたします。

相手方の過失で修理費用が全額補償されるとのことですので、その点はひとまず一安心ですね。

なぜ、ディーラーの方は「出ないと思います」とおっしゃったのか

まず、保険の考え方から整理させてください。

保険は「原状回復」、つまり事故の前の状態に戻すことがベースになっています。

ですからコーティングも、もちろん対象になることがあります。

ただ、新車のときに施工したコーティングには、保証期間が設けられていることが多いです。

その期間を過ぎている場合、保険での補償対象外とされることもあります。

ディーラーの方がおっしゃっているのは、おそらくこの部分です。

ここは、はっきりお伝えしておきたいところです。

担当の方は、意地悪で言ったわけではありません。

これまでの経験から「そうなる可能性が高い」と分かっていて、あとでがっかりされないように、先に伝えてくださったのだと思います。

そしてもうひとつ。

「出ないと思います」は、「出ません」ではありません。

まだ、決まっていないということです。

証明書がないと、なぜ話がややこしくなるのか

ここからは、少し言いにくいことをお伝えします。

重ね塗りを続けてこられたコーティングに、保証書や施工証明書はお手元にあるでしょうか。

もし無くて、ご自身で続けてこられたものだとすると、そこから先は「感覚の話」になってしまいます。

ご相談者さまがそういう方だというつもりは、まったくありません。

ただ世の中には、コーティングをしていたと事実と違うことを伝えて、修理代を上乗せさせようとする人も、残念ながらいます。

ですから保険会社としても、裏づけのないものを簡単には認められない、という事情があります。

これは意地悪ではありません。

見方を変えると、「まじめに手入れをしてきた人の分が食われないための仕組み」でもあります。

あくまで私の考えですが、そこは分かったうえで臨むほうが、気持ちが楽だと思います。

紙がなくても、手入れの跡はお車に残っています

では、証明書がない方には打つ手がないのか。

そんなことはありません。

事故の修理では、「損害の額を判定する専門の方」がお車の状態を見ることがあります。

そして修理を担当するディーラーの方も、毎日たくさんのお車をご覧になっています。

7年ぶんの手入れというのは、そういう方たちが見れば伝わるものです。

あくまで私の感覚ですが、洗いっぱなしで7年経ったお車と、手をかけ続けて7年経ったお車は、並べなくても違いが出ます。

そのうえで、その方たちが「これはきれいに乗られている」と感じてくださったなら、コーティング費用の上乗せを認めてもらえることも、あるかもしれません。

ピゴス
ピゴス

艶って、写真ではなかなか伝わらないんですよね

でも実車を見れば、手をかけてこられたかどうかは、けっこう分かるものです

だからこそ、見ていただく価値があると思います

話が止まると、実はみんなが困ります

もうひとつ、知っておいていただきたい構図があります。

修理が前に進まないのは、保険会社にとってもディーラーにとっても困ることです。

お互いに、時間もお金もかかってしまうからです。

ですので、こちらが納得できないまま止まっているときには、保険会社やディーラーのほうから落としどころを提案してくださることもあります。

全部が通るか、まったく通らないか。

その二択とは限らない、ということです。

だからこそ、何も言わないまま諦めてしまうのが、いちばんもったいないと思います。

保険会社に伝えることは、ひとつだけでいい

いざ相談するとなると、何をどう言えばいいのか身構えてしまうかもしれません。

でも、伝えることはひとつです。

「この車を、ずっときれいに保ってきました」

それだけで十分だと思います。

そのうえで、お手元にあるものをひと通り見てみてください。

  • 施工証明書や保証書=あれば強い材料になります(無くても大丈夫です)
  • お車そのもの=いちばんの材料です。見ていただけるようにしておきましょう
  • ディーラーの担当の方の見立て「きれいに乗られていますね」と言われたことがあるなら、それはとても大きいです

特別な言い回しも、交渉のテクニックも要りません。

きれいなのは確かなのですから、そのことを、そのまま相談してみてください。

もらい事故は、ひとりで向き合うことになりやすい

今回のように、こちらの過失がゼロのもらい事故では、ご自身の保険会社は相手方との交渉に出てこられません。

賠償する責任がないぶん、法律上、代理ができないからです。

被害に遭った側なのに、相手方の保険会社と向き合うのが自分ひとりになる。

もし、いま加入されている保険に弁護士費用特約が付いているなら、その状況で頼れることがあります。

付いているかどうかは、保険証券を見ればすぐに分かります。

この特約の考え方は、こちらの記事にまとめてあります。

【慌てないで】事故で「損する人・しない人」元営業が教える“正しい初動”と弁護士特約事故で損する人としない人の差は『初動』と『備え』。もらい事故で自分の保険会社が交渉できない理由、弁護士特約の使いどころ、事故直後にやることを、元ディーラー営業×保険のプロが実例で解説します。...

まとめ:紙がなくても、諦めなくていい

今回のお話を、整理しておきますね。

  • コーティングも「原状回復」の一部として、補償の対象になることがある
  • 新車時のコーティングの保証期間を過ぎていると、対象外とされることもある
  • ディーラーの方の「出ないと思います」は、経験からの親切であって、決定ではない
  • 施工証明書や保証書が無いと感覚の話になりやすい。でも打つ手が無いわけではない
  • 見ていただくのは、お車そのもの。手入れの跡は、プロが見れば伝わる
  • 伝えることはひとつ=「ずっときれいに保ってきました」という事実
  • 認めてもらえないこともある。それでも、聞いてみないことには始まらない

もし認められなかったとしても、道はあります

もし今回コーティングが認められなかったとしても、修理が終わったあとにご自身でやり直すという道は残っています。

どこに頼むと納得できるのかは、こちらで比べています。

コーティングはディーラーと専門店どちらが得?費用と品質を比較カーコーティングはディーラーと専門店どっちが得?高額コーティングより大事なのは洗車習慣。費用と品質の選び方を、元1級整備士×元ディーラー営業が整理します。...

あわせて、もうひとつ。

事故のあとは、ご自身の保険がいざというときにどう動くのかも気になってくるところです。

補償の考え方そのものは、こちらにまとめてあります。

自動車保険、年に1回の見直しで年間3万円の節約に成功|10分でできる比較方法 年に1回の更新タイミングや、車が変わったタイミングは、自動車保険を見直す絶好のチャンスです。 私自身、見直しで年間55,000円...

今回の修理は相手の方の保険から出るものですので、ご自身の保険料が上がることはありません。

ただ、こういうことがあると「自分の保険は、いざというときちゃんと動いてくれるのだろうか」と気になってくるものです。

今日決める必要は、まったくありません。

いま付いている特約を確認するついでに、何社かの見積もりを並べてみると、いまの内容が厚いのか薄いのかが見えてきます。

💡 いまの保険の位置を、数字で確かめておく

車のこと全体をゼロから整理したい方は、車の教科書ページもどうぞ。

【はじめに】損しないカーライフの歩き方|6つの章でわかる車の教科書車の維持費・選び方・買い方・保険・売却までを6つの章で整理した入門まとめ。元1級整備士×元ディーラー営業のピゴスが、20以上の記事で損しないカーライフへの歩き方を案内します。困った時に戻れる入口ページです。...

ご相談者さまの、その後

このご相談には、続きがあります。

保険会社への交渉「あり」との事で、少し希望がもてました

コーティングについては初回ディーラー施工の後は全てDIYでしたので施工証明書や保証書はありません

ただディーラーの方にも「綺麗に乗られている」と仰っていただいておりますので、ダメもとで保険会社への交渉を行います

やはり、証明書はありませんでした。

でもこの方は、ご自身ですでに答えを見つけておられました。

ディーラーの方の「綺麗に乗られている」というひと言です。

紙は無くても、7年間の手入れをちゃんと見てくれていた人が、すぐそばにいた。

それが、この方のいちばん強い材料でした。

そしてもうひとつ、私が好きなのが「ダメもとで」という言葉です。

期待しすぎず、でも諦めもしない。

この距離感でいられる方は、この先も損をしにくいと私は思っています。

事故そのものは、なかったことにはできません。

でも、7年ぶんの手入れは、まだ戻せるかもしれません。

あなたのお車に、またあの艶が戻りますように🐧

事故のあとの保険のやり取りで疑問や不安がある場合は、「X」「お問い合わせ」「コメント欄」などでお気軽にご相談ください。

最新記事のアップもXでお伝えしておりますので、よろしければフォローよろしくお願いいたします

ABOUT ME
ピゴス
ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、コメント欄や「X」などでいつでもメッセージを承っております。お気軽にどうぞ!