残クレの一括返済は得か損か?戻るのは金利手数料だけと元ディーラー営業が解説

残クレ、今のうちにまとめて返してしまったほうがいいのかな——。
毎月きちんと払えてはいるけれど、手元にはまとまったお金がある。
そんなとき、一度は頭をよぎる悩みだと思います。
この記事では、元ディーラー営業として残価設定クレジットを扱っていた私が、一括返済で本当に得をする部分と、決める前にやっておきたいことをお伝えします。
借金を早くなくしてスッキリしたい、というお気持ち、とてもよく分かります。
ただ、一括返済で戻ってくるお金は、思っているより控えめなことが多いんです。
そこも含めて、判断の材料を並べていきますね。
残価設定クレジットを一括返済して得をするのは、基本的に「まだ払っていない金利手数料が、いくらか戻ってくる分」だけです。
しかも、その手数料は全部が戻ってくるとは限りません。
ですので、ディーラーやファイナンス会社に総額を計算してもらってから決めても、まったく遅くありません。
もしもの時のための貯えを別に確保できていて、現金で払えるのであれば、返して困ることはまずないと思います。
ただ、戻ってくる分は思っているより小さいので、慌てて決める話でもない、というのが私の考えです。
逆に、もしもの時のための貯えまで使い切る形になるなら、無理に急がないという選択も立派な正解です。
いただいたご相談
今回は、こんなご相談をいただきました(内容を編集して掲載しています)。
残クレ(残価設定クレジット)の一括返済について、ご相談させてください。
軽自動車を5年の残クレで購入しています。
以前は漠然と助かる購入方法だなと思っていて、これまで2回利用し、今が3台目です。
ですが、お金のことを勉強しはじめてから、この先の残クレはやめようと感じていました。
そんなときに、お金に関する動画で「残クレは返済してしまったほうがよい」という話を少し聞き、思い切ってご相談することにしました。
支払いを始めてまだ1年半で、残りは170万円ほどです。
月2万円ちょっと+ボーナス時に2回、5万円ずつ返済しています。
「直近で使う予定のない資金」から全支払い分を引くと、50万円くらいが手元に残る計算になります。
このまま支払いを継続して最終支払いで残価分を支払うか、今の時点で一括返済をしてしまったほうが良いのか、ご意見を伺いたいです。
しっかり考えたうえでのご相談、ありがとうございます。
3台目まで使ってきた仕組みを、あらためて見直そうとされているのが素晴らしいと思います。
念のため補足しますと、「残価」というのは、最終回にまとめて払う約束で取り置きされている金額のことです。
① 一括返済で得をするのは、基本的に「金利手数料が戻る分」だけです
残価設定クレジットも、普通のカーローンも、お金を借りて金利手数料を払っている、という点では同じ仕組みです。
ですので、一括返済で得られるメリットは、突き詰めると1つだけになります。
まだ払い終えていない期間の金利手数料が、いくらか戻ってくる(払わなくて済む)ということです。
逆に言うと、それ以外にお金の面での大きなメリットは、あまりありません。
以前、残り150万円ほどのローンを一括返済すべきか、という同じようなご相談をいただいたことがあります。
そのときにお伝えしたのも、この一点でした。
現金でどんと払えるのであれば、10万〜20万円ぐらいは戻る分でお得になるかもしれません、というお話です。
※戻る金額は、残債・残りの期間・金利や、どこまで払い終えているかによって大きく変わりますので、あくまで当時のご相談での目安です
一方で、銀行のローンを借りて立て替えるかたちで返すのであれば、手間暇のわりに、ほとんどメリットはないと思います。
金利の低いローンに借り換えれば差額は出ますが、審査や手続きの手間を考えると、割に合わないことが多いからです。
ちなみに、毎月の支払いが少しきついという方には、逆のご提案をすることもあります。
銀行で返済期間を長くするプランに変更して、月々の負担を軽くするという作戦です(金利で、今という大切な時間を買っているイメージですね)。
なお、ここまでは今の金利がそれほど高くない場合の話です。
もし金利が高めで、返済期間もまだ長く残っているなら、借り換えや繰り上げ返済(=予定より早く、多めに返すこと)が答えになることもあります。
② その金利手数料、全部が戻ってくるとは限りません
ここが、あまり知られていないところだと思います。
一括返済すれば、残りの金利手数料がまるごと消える。
そんなイメージを持たれている方が、とても多いんです。
ですが実際は、契約書(規約)に手数料の計算方法が書かれていて、そこで戻る分が決まります。
よく使われるのが「78分法」と呼ばれる計算方式です(返済の初期ほど、金利手数料の割合が大きくなる計算方法になります)。
言葉だけだと分かりにくいので、数字にしてみます。
5年(60回)払いで、分割払手数料の総額が20万円だったとします。
78分法では、この20万円を60回に均等に割りません。
1回目をいちばん重く、最終回をいちばん軽く配分していきます。
ちなみに「78」という名前は、12回払いのときの1+2+3…+12=78という、配分の合計から来ています。
この配分で計算すると、一括返済したときに戻ってくる手数料は、こうなります。
| 一括返済する時期 | 期間としては | 戻ってくる手数料 | 実際に払う手数料 |
|---|---|---|---|
| 1年後(12回) | 20% | 約128,500円 | 約71,500円 |
| 2年後(24回) | 40% | 約72,800円 | 約127,200円 |
| 2年半後(30回)=ちょうど半分 | 50% | 約50,800円 | 約149,200円 |
| 4年後(48回) | 80% | 約8,500円 | 約191,500円 |
※仕組みを分かりやすくするための計算例です。手数料の総額・回数・契約内容によって金額は変わりますので、実際の数字は必ず計算してもらってください
見ていただきたいのが、ちょうど半分の2年半で返した場合です。
期間としては半分しか経っていないのに、手数料は7割以上(約149,200円)をすでに払っていることになります。
「半分返したのだから、手数料も半分戻ってくるはず」とは、ならないんです。
そして4年たったころには、戻ってくるのは1万円弱まで小さくなります。
私も仕事で自動車ローンを扱っていたことがありますが、契約してすぐに残債(=まだ払い終えていない残りの金額)を一括で払っても、現金一括で買った場合と同じ金額にはなりませんでした。
以前、600万円台のお車で「契約してすぐ一括返済したらどうなるか」というご相談をいただいたときは、すぐに払っても10万円台の手数料は乗ってくる、というイメージでした。
※金額は契約内容によって変わりますし、実際に計算してもらえば、もう少し安いこともあります
もちろんこれは600万円台のお車での話ですので、残りが170万円ほどであれば、金額の規模はもっと小さくなります。
つまり、「一括返済すれば金利手数料がまったくかからなくなる」ということは、ないと思っておいたほうが安全です。
これは、お店やファイナンス会社が意地悪をしているという話ではありません。
契約書にきちんと書かれている、仕組みの話です。
ここを知らないまま返してしまうと、思ったより戻らなかった、とがっかりすることになります。
先に知っておけば、それも込みで判断できますよね。
そしてもう1つ、今回のご相談で大事なのが「5年のうち、1年半が過ぎている」という点です。
こうした計算方法では、返済の初期ほど手数料の割合が大きくなります。
ですので、契約から時間が経っているほど、今返しても戻ってくる分は小さくなっていきます。
「今すぐ返さないと損がふくらんでしまう」という焦りは、あまり必要ないと思います。
③ 決める前に「今返すといくらになるか」を計算してもらいましょう
ここまでを踏まえると、やることの順番はとてもシンプルです。
まず、ディーラーやファイナンス会社に「今、一括返済したら総額でいくらになりますか」と聞いてみてください。
電話1本、もしくはお店で相談すれば、計算してもらえます。
そしてこのとき、もう片方の道もあわせて聞いておくのがおすすめです。
このまま続けるなら、月2万円ちょっと+ボーナス時の5万円が、あと3年半つづきます。
そして最終回には、残価をまとめて払う山が待っています。
ですので、電話するときに「最終回の残価はいくらですか」も一緒に確認しておいてください。
今返す総額と、このまま払い続けた場合の総額と、最終回の山。
この3つが並んではじめて、2つの道を同じ土俵で比べられます。
そしてもう1つ、そのときに一緒に確認しておきたいことがあります。
ローンとセットになっている特典が、一括返済で終わってしまわないかという点です。
たとえば、メンテナンスパックがローンとセットになっていて、一括返済すると使えなくなってしまう、というケースがあります。
戻ってくる手数料と、失ってしまう特典。
この2つを並べてはじめて、本当の損得が見えてきます。
実際に「一括返済するとメンテナンスパックが無効になる」とお店から言われた方のご相談も、こちらで扱っています。
パックを続けるか返済するかの考え方を整理していますので、あわせてどうぞ(戻る手数料の考え方は、この記事の①②のとおりです)。
まずは、電話で数字をそろえるところから始めてみてください。
この一手間で、迷っている時間がぐっと減りますよ。
④「頭では分かっているのに不安」は、悪いマインドではありません
実は今回のご相談者の方は、もしもの時のための貯えは、すでに別に確保されていました。
170万円を返しても、50万円ほどは手元に残る計算です。
つまり、数字の上では、返そうと思えば返せる計算になります。
それでも、こうおっしゃっていました。
すぐに使わないとはいえ、一気に170万円が手元から離れていくことへの不安感は、少なからずあります。
負債がなくなるし、余計な金利を払わずに済むし、プラスの影響のほうが大きいことは分かってはいるつもりですが、どうも気持ちに……。
あまり良いマインドではないですよね。
その不安は、悪いマインドなんかじゃないと思います。
私自身、お恥ずかしい話ですが、300万円の車ぐらいなら迷わずローンを組むタイプでした(笑)。
手元にお金は残しておいて、その分だけを安い金利で借りればいい。
そういう考え方で、実際にローンを組んだことがあります。
ところが組んでみると、想像以上にうまくいきませんでした。
毎月の返済が、「手元にお金を残せる安心」以上にストレスの日々だったんです。
つまり、「手元にお金がある安心」と「借金がない安心」は、どちらが大きいかが人によってまるで違います。
私はローンを組んでみて、はじめて自分が後者だったと知りました。
数字で決まらない部分は、ご自身がどちらでよく眠れるか、で決めていいと私は思っています。
手元のお金が減っていくのを見るのがイヤ、というのは、ごく自然な感覚です。
その感覚も、立派な判断材料にしていいと私は思いますよ。
参考までに、私ならどう考えるかも書いておきます。
まず計算してもらって、戻ってくる金額を見ます。
そのうえで、もしもの時のための貯えが別にあって、現金で払えるなら、私は返してスッキリさせると思います。
自分が「借金がない安心」のほうが大きい人間だと、痛い目を見て知っているからです。
逆に、思ったより戻らないと分かって、じゃあ急がなくていいか、となるのもよくある結論です。
どちらを選んでも、失うものはそれほど大きくありません。
手元にお金を残す安心と、借金をなくす安心。
この2つをもう少し詳しく整理した記事もあります。
「浮いたお金を運用に回したほうが得なのでは」という話にも、そちらで触れています(中古車のご相談への回答ですが、考え方は新車でも同じです)。
⑤ 本当の分かれ目は「次の車をどう買うか」かもしれません
最後に、いちばんお伝えしたいことを書かせてください。
今回の残クレを返すか返さないかで動くお金は、実は「次の車をどう買うか」に比べれば、そこまで大きくならないことが多いと思います。
正確なところは、③でお伝えしたとおり、計算してもらってはじめて分かります。
というのも、残価設定クレジットは、数年で次の車に乗り替えることを前提にした仕組みだからです。
3台目まで残クレを重ねてこられた、ということは、そのたびに車を乗り替えてこられたということです。
乗り替えのたびに、税金や手数料などの諸経費が、毎回まとまってかかります。
逆に、1台を長く乗るほど、その回数は減っていきます。
残クレという仕組みそのものの、メリットとその裏側については、こちらで詳しくお話ししています。
うれしいことに、今回のご相談者の方は、そのあとこう教えてくださいました。
この先は残クレでの購入はせずに、乗り替えなしにしようと思うようになりました、と。
一括返済をどうするかより、こちらのほうがずっと大きな決断だと思います。
もちろん、数年ごとに新しい車を楽しむのも、立派な一つの価値観です。
残クレが向いている方もいらっしゃいますので、そこは否定しません。
ただ、この先は長く乗ろうと決めたのであれば、その決断のほうが、金利手数料の戻り分よりもずっと大きな金額を残してくれると思います。
まとめ
残クレの一括返済について、あらためて整理します。
- 一括返済で得をするのは、基本的に「まだ払っていない金利手数料が戻る分」だけです
- その手数料は全部が戻るとは限りません(契約書の計算方法で決まります)
- まずは「今返すといくらか」と「最終回の残価はいくらか」を両方計算してもらうのが、損しない順番です
- ローンとセットの特典が消えないかも、一緒に確認しておきましょう
- もしもの時のための貯えまで使い切る形になるなら、無理に急がないのも正解の一つです
そして、いちばん大きいのは「次の車をどう買うか」だと私は思います。
返すか返さないかより、次の1台をどう選ぶか。
そちらのほうが、この先ずっと効いてきますよ。
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