著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

車検の見積書を渡されて、金額を見て、思わず声が出る。

しかも前回より、ずいぶん上がっている。

中身を見ても、聞いたことのない部品の名前が並んでいるだけ。

どれが本当に必要で、どれが省けるのか、さっぱり分からない。

そんな1枚を前にして、固まってしまうことがあります。

✅ 結論からお伝えします

車検の見積書には、たいてい2種類のものが混ざっています。

「今回の車検に通すために要るもの」と、「そのあと安心して乗るためのもの」です。

あと1〜2ヶ月で手放すと決まっているなら、後者は見送れることがあります。

この記事の仕分けは、実際にご相談者さまの見積書を見せていただいて、項目ごとにお答えした記録です。

安全に関わるところは、整備士さんに聞いてから決めてください。

聞き方までお伝えしますので、ひとりで抱え込まなくて大丈夫ですよ。

まずは、いただいたご相談です

今乗っているファンカーゴ(19万キロ)を車検に通そうとしたら、25〜30万円くらい掛かると言われました。

年数と走行距離からも覚悟してはいたのですが、前回の車検時の金額から倍になっていました。

しかも、今回通しても次回も同じくらい掛かると。

通勤で車は必須なので買い替えしなければならないのですが、あまり探している時間もなく……。

周りに車関係の知り合いもいないため、アドバイス頂けましたら幸いです。

久々に焦っております。

前回の倍。

しかも次回も同じくらい、と言われている。

これは、なかなかこたえますよね。

このあと何度かやりとりをして、ご相談者さまはこう書いてくださいました。

最低限の修理で車を探すのが、現実的に時間も作れてコスト的にもいいのかもしれないと思いました。

修理箇所を箇条書きにした書類をもらいましたが、素人の私にはさっぱりで。

ただ、今まで見た事ない項目があったりと、余程酷いのだろうと感じはしました。

書類添付するので、宜しければ確認頂けますでしょうか。

そうして、見積書の写真を送ってくださったんです。

なぜ、前回の倍になるのでしょう

仕分けの前に、ひとつだけ。

「前回の倍」というのは、けっして珍しいことではありません。

車の部品には、距離で減っていくものと、年数で傷んでいくものがあります。

ゴムのブーツ類、ホース、ベルト、ブッシュ。

このあたりは、走っていなくても少しずつ硬くなって、ひび割れていきます。

つまり、年数が経つほど「そろそろ寿命」の部品が、同じ時期にまとまって出てくるんですね。

前回の車検では大丈夫だったものが、今回いっせいに引っかかる。

これが「倍になる」の正体です。

そして、お店から「次回も同じくらい掛かる」と言われたとのこと。

これも、うそでも脅しでもないと思います。

19万キロまで走ったお車なら、これから毎回それなりの金額が続く可能性は高いです。

だからこそ「買い替える」という判断が出てくるわけで、その判断そのものは、とても自然だと思います。

ピゴス
ピゴス

見積書が高くなるのは、お店が何かをしているからではなくて、お車が「そういう時期」に来ているからなんですよね。

そのうえで、今回の車検をどう通すか、というお話をしていきます。

この仕分けは、実際の見積書を見てお答えしたものです

このあとお伝えする仕分けは、一般論ではありません。

送っていただいた見積書を1項目ずつ見ながら、お答えしたものです。

ですから、ここに出てくる部品の名前は、実際にその1枚に並んでいたものになります。

ただ、あなたのお車の見積書に、同じ項目が並んでいるとは限りません。

車種も年式も、走り方も違いますからね。

この記事は「答え」ではなく「見方」として使っていただけたらと思います。

仕分けの前に、目的をひとつに決めます

見積書を見る前に、決めておきたいことがあります。

それは「今回の車検で、何を買うのか」です。

「次の車検までの2年間を、できるだけ良い状態で乗り続ける」のか。

それとも「今回の車検に通って、そのあと1〜2ヶ月、安全に走れればいい」のか。

この2つは、必要な整備の中身がまったく違います。

ご相談者さまは、後者でした。

買い替えはもう決まっていて、車検は次の車を探す時間をつくるためのものだったからです。

安全上のこともあるので、項目を省く判断は、最終的には自己責任になります。

ただ、これは「あとはご自分で決めてください」と突き放す話ではありません。

このあと、整備士さんにどう聞けばいいかもお伝えしますね。

見積書を、4つに仕分けます

① 絶対に必要そうなもの

まずは「これがないと車検に通らない」ものから。

  • ガラスの飛び石傷(キズ埋め)……とくに運転席の前は視界に関わるので、埋めるか交換になります
  • リアホイールシリンダーの左右漏れ(=後輪のブレーキ部品からの油漏れ)……止まる力に直結します
  • スタビリンクの左右割れ(=カーブでの傾きを抑える足回りの部品)……走行の安定に関わります
  • ロアアームブッシュの左右割れ(=タイヤを支える腕のゴム部分)……ここも足回りです

共通しているのは、どれも「安全に直結している」ことです。

ここは削れません。

② 通るかどうか、微妙なもの

次に「やらないと車検に通らないのか、微妙」なもの。

状態しだいで、必須にも省略にもなる項目です。

  • 下回りのサビ……車検に通るなら、そのままで良いと思います。ただ、ダメだとすると修理金額が一気に跳ね上がります
  • マスターバック(=ブレーキを踏む力を助ける装置)……要確認です
  • ワイパーゴム……これは大した金額じゃないので、替えてしまってもいいと思います
  • ヘッドライトのクリーニング……車検の光量が足りているかどうか次第です

この4つは、整備士さんに「これは車検に通りますか」と聞けば、その場で答えが出ます。

③ あと1〜2ヶ月なら、私ならしないもの

ここが、この記事の中心です。

車検のあと1〜2ヶ月くらい乗れればいい、という場合だとしたら、私ならこれはしません。

  • クーラント(冷却水)の補充
  • ブレーキオイルの交換
  • エンジンオイルの交換(減っているようなら、補充で済ませます)
  • タイヤ交換
  • ベルト交換

ただ、これは「1〜2ヶ月」という期間があってこその判断です。

乗る期間が長くなるほど、省く判断は慎重にしてください。

それと、同じ省略候補でも温度差があります。

クーラントやエンジンオイルは比較的見送りやすいところです。

いっぽう、ブレーキオイルとベルトは、見送れる場合もありますが、慎重に考えたいところです。

ブレーキは止まる力そのものですし、ベルトは切れると走れなくなるからです。

この2つは、整備士さんの見解を聞いてから決めてください。

④ 車検とは関係のない、セット項目

最後に、車検の合否とは関係がないものです。

  • 下回り洗浄
  • 下回り塗装(パスター、シャシブラックなど)

どちらもサビを防ぐためのもので、車検に通るかどうかには関係ありません。

これがセットで入っているのは、お店が何かを企んでいるからではありません。

サビを気にされる方が多いので、車検のついでに頼めるように用意されているんですね。

ただ、1〜2ヶ月で手放すのであれば、なおさら要りません。

だから今回は、私ならやりません。

「今回は結構です」と伝えれば、たいていカットできます。

長く乗る場合でも、下回りの洗浄や塗装がどこまで要るかは、こちらでお話ししています。

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迷ったときの、当てはめかた

ここに載っていない項目が出てきたときは、この物差しを当ててみてはいかがでしょうか。

  • 安全・故障・漏れ・摩耗 に関わるもの → 必要なことが多い
  • 見栄え・防錆・燃費アップ・消臭・添加剤 → 車検そのものには不要なことが多い

だいたい、これで分けられます。

整備士さんへの、いちばん早い伝え方

ここまで仕分けても、最後に決めるのは整備士さんとの会話です。

そして、いちばん早いのは、事情を正直に伝えることでした。

車検のあと1〜2ヶ月で手放す予定です。

今回は、車検に通るための最低限だけお願いできますか。

どれが必須で、どれが省けますか。

この一言で、たいていの整備士さんは分かってくれます。

「直近で乗り換える予定だから、修理しないリスクを承知で車を探している」という事情は、現場ではよくある話だからです。

ここで、ひとつ大事なことをお伝えさせてください。

「必須はどれですか」と聞くのは、答えをもらうためだけではありません。

その質問に、ちゃんと向き合って説明してくれるかどうかを見るためでもあります。

「必須」と「おすすめ」を分けて説明してくれるお店は、信頼していいと私は思っています。

逆に「いや、これは安全のために必要です」と言われた項目は、素直に従うのが賢明です。

整備士さんは、不要なものを押し売りしたいわけではありません。

あなたが車検のあとも安全に走れるように、と考えて出してくれた見積もりです。

それと、もうひとつ。

そのお店で次の車も買おうと思っているなら、それも伝えてみてはいかがでしょうか。

より力になってくれるかもしれません。

削れても、5万円ぐらいです

では、実際どれくらい下がるのか。

細かいものを省いていくだけでも、5万円ぐらいはトータルで安くなる場合もあるかもしれません。

あくまで「場合もある」です。

お車の状態によっては、ほとんど削れないこともあります。

そして、ここでもうひとつ考えていただきたいことがあります。

25万円の見積もりが20万円になっても、20万円は出ていくんですよね。

金額を大きく動かしたいなら、「そもそも今回、車検を通すのか」から考え直したほうが早いことがあります。

金額を大きく動かすなら、道そのものを選び直す

「買い替えたいけれど、探す時間がない」なら

ご相談者さまのように、買い替えはもう決まっていて時間だけが足りない場合、選べる道は車検だけではありません。

代車やレンタカーでつなぐ道も、すぐ乗れる在庫車に絞る道もあります。

納期の実情も含めた進め方は、こちらにまとめています。

車検切れ直前の買い替え|納車まで間に合わない?焦らずつなぐ3つの方法
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「そもそも通さずに売る」なら

車検が残っているうちに、通さずに売ってしまうという道もあります。

車検代をまるごと払わずに済むので、金額は大きく動きます。

ただ、いいことばかりでもありません。

通してから売る場合と比べると、損得はほぼ引き分けでした。

その比べ方は、こちらでお話ししています。

車検を通してから売る?先に売ってレンタカーでつなぐ?損得はほぼ引き分けでした新しい車の納車は7月、いまの車の車検は5月に切れる。通してから売るか、通さず売ってレンタカーでつなぐか。両方のリスクを並べたら損得はほぼ引き分けでした。では何で決めるのか、元ディーラー営業がお答えします。...

「車検を通したばかりだと、査定は上がるの?」という損得は、こちらにまとめています。

車を売るタイミング。車検直前は安くなる?時期より、複数社の査定が大事
車検直前は売却額が下がる?売却タイミングの正しい判断基準「車検前だと売却額が下がる」は本当?答えは事実です。ただし車検を通してから売ると、多くの場合その費用のほうが高くつきます。相場は読めないので「ベストな月」を狙いすぎず、同じ日に複数社で比べるほうが手取りへの影響は大きい、と元ディーラー営業がお答えします。...

それと、もしまだ「買い替える」と完全に決まっていないのであれば、道はもう1つあります。

乗り続ける、という道です。

13年・12万kmを超えたお車で、車検を通すか買い替えるかを考えたお話は、こちらです。

13年12万kmの軽は車検を通していい|乗り換えこそ、いちばん高い修理
13年12万kmの軽、車検は通していい 乗り換えこそ、いちばん高い修理だからです13年・12万kmの軽自動車。車検を通すか、買い替えるか。元1級整備士が、乗り換えの諸経費15〜20万円・13年超の増税の実額・突然止まったときの備え5つ・車両保険の外しどきまでお答えします。...

おまけ:手放す車は、価値を引き出してから

乗り換えには、車両代だけでなく、税金や手数料などの諸費用が15〜20万円ほどかかります。

だからこそ、今の車を1円でも高く売れれば、その負担をぐっと軽くできるんです。

相場の調べ方や、高く売るコツは、こちらにまとめています。

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まとめ:どこを削るかより、どう聞くか

車検の見積書を前にしたときの考え方を、まとめると次のとおりです。

  • 見積書には「車検に通すために要るもの」と「そのあと安心して乗るためのもの」が混ざっている
  • あと1〜2ヶ月で手放すなら、後者は見送れることがある(ただしブレーキオイルとベルトは慎重に)
  • 迷ったら「安全・故障・漏れ・摩耗」か「見栄え・防錆・燃費・消臭・添加」かで当てはめる
  • 整備士さんには「1〜2ヶ月で手放します。最低限でお願いできますか」と正直に伝えるのがいちばん早い
  • 「必須はどれですか」の質問は、答えをもらうためだけでなく、向き合ってくれるかを見るため
  • 削れても5万円ぐらい。金額を大きく動かしたいなら「そもそも通すか」から考え直す
ピゴス
ピゴス

車検代を抑えられたら、その分、次の一台を焦らず選べます。

慌てて決めるより、ずっと損の少ない選択になりますよ😊

ご相談者さまの、その後

このご相談には、続きがありました。

今回のアドバイスを元に、一度、車屋に相談してみたいと思います。

見積書の写真を送ってくださって、仕分けをお返しして、そして「相談してみます」。

この時点では、金額はまだ1円も下がっていません。

変わったのは、「聞いていいんだ」という気持ちのほうでした。

車検の見積書は、渡された瞬間は、ただの請求書に見えます。

でもあれは、「これをやりますよ」という提案書なんですね。

提案書なら、聞いていいし、相談していい。

じつはこの方、翌朝には、次の車の候補を見つけて相談してくださいました。

ネット限定で、実物を見ることができない車でした。

私は「私なら買わないかな」とお答えしました。

悪い車ではなさそうでしたが、実物を見られない買い方は、車に詳しい方向けだからです。

お返事は、こうでした。

この金額の買い物をAmazon感覚でネットで買うのは怖かったので、教えてもらえて良かったです。

少し焦りもあったので、少し落ち着いて考えてみたいと思います。

車検を最低限にして手に入れた時間は、次の一台を落ち着いて選ぶための時間です。

そのとき見つけた一台について、私がどうお答えしたかは、こちらにまとめています。

実車を見せてもらえない中古車は買っていいですか|私なら買いませんがその一台は無駄になりません
実車を見せてもらえない中古車、買っていいですか 私なら買いませんが、その一台は無駄になりませんネットで見つけた一台に「現車確認なし」と書いてある。私なら買いません。見られないぶんは値段では取り返せないからです。ただ、その一台は無駄になりません。同じ条件で近くを探すと似た車が見つかります。...

もし、いま手元に見積書があって、どこから聞けばいいか分からないなら。

見せていただければ、私なりに「ここは聞いてみてもいいかもしれません」とお伝えできることもあります。

実際この記事の仕分けも、そうやって生まれたものですから。

車検の見積書で疑問や不安がある場合は、このページ下の「コメント欄」からお気軽にどうぞ(ニックネームもメールアドレスも要りません)。

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それでは、損しないカーライフをお過ごしください🐧

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ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、記事の下のコメント欄でいつでも承っております。ニックネームもメールアドレスも要りませんので、お気軽にどうぞ!