著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

中古車をネットで探していると、条件のそろった一台に出会うことがあります

年式も走行距離も予算もちょうどいい

写真もきれいで、説明も丁寧

そこまで読み進めたところで、最後の一行に目が止まります

「現車確認なしでのご購入となります」

見に行ける距離ではない、という話ではありません

そもそも「見せてもらえない売り方」の一台だった、ということです

「これ、買ってしまっていいのかな」

ここで手が止まった方に、私なりの考えをお伝えします

✅ 結論からお伝えします

私なら、買いません

車のことがあまり得意ではないという方なら、なおさらです

ただし、それは「その車が悪いから」ではありません

実車を見られないぶんを、値段で取り返すことができないからです

そのうえで、もうひとつお伝えしたいことがあります

その一台を見つけたこと自体は、まったく無駄になりません

まずは、いただいたご相談です

買い替えを視野に検討していますが、ネットで良さげな車を見つけました

オンライン限定で、実際の車を見ることができません

そこで、車の程度や金額はどうか、お考えをお伺いできますでしょうか

ちなみに走行距離は45,000km、金額は約190万円です

年数は2019年製

10年くらいは乗りたいと考えていたところ、近い質問をされていた方がちょうどいらしたので、その辺りは大丈夫そうかなと思っています

条件だけを並べると、悪くなさそうに見えます

ご相談をいただいた時点で3年ほど前の年式で、4.5万km

10年乗りたいという狙いそのものも、無理のあるものではありません

ご本人も書いていらっしゃるとおり、同じ時期に、別の方から「5万kmくらいの中古車で10年乗れますか」というご相談もいただいていて、その答えはこちらにまとめています

5万kmの中古フリードとシエンタは10年乗れますか|行けるかどうかは買ったあとで決まります
5万kmの中古フリード/シエンタ、10年乗れますか 行けるかどうかは買ったあとで決まります走行5万kmの中古フリードやシエンタで、これから10年(15万km)乗れますか。答えは行けます。分かれ目は買う瞬間ではなく、買ったあとの点検と油脂類の交換のほうでした。ご予算150〜190万円のご相談です。...

つまり、迷っていらっしゃるのは「どの車を選ぶか」ではありません

「この買い方でいいのか」のほうです

じつはこの方は、その2日前にも別のご相談をくださっていました

19万km走ったお車の車検に、25万円から30万円かかると言われた、というご相談でした

しかも、お店への持ち込みが車検の期日ぎりぎりになってしまっていた

通勤でお車が必要で、代車を借りながら次の車を探している最中

ご本人の言葉を借りると「久々に焦っております」という状況です

その2日後にご相談いただいたのが、この一台でした

ここは、とても大事なところだと思っています

時間に追われているときほど、見つけた一台が「これしかない」に見えてきます

これは、車に限った話ではないと思います

ですので、これから書くことは「焦っているあなたが悪い」という話ではまったくありません

車検の見積書をどこまで削れるかを、この方と一緒に見たお話は、こちらに書きました

車検の見積書はどこまで削れますか|あと1〜2ヶ月で手放すなら私ならここはしません
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なぜ、私なら買わないのか

まず、正直なところからお話しします

ピゴス
ピゴス

せっかく見つけてきていただいたのに申し訳ないのですが、「私なら買わないかな」という答えになります

ネットで買うリスクを考えると、あと一押し足りない、という感じです

実車を見られない買い方は、どちらかというと玄人向けなんですよ😣

車のことがあまり得意ではない、とおっしゃっている方であれば、おすすめ度はもう少し下がります

見抜く力を前提にした買い方だからです

ただし、その車が悪いという意味ではありません

ここは分けてお伝えしたいところです

いただいた条件を見るかぎり、悪い車ではなさそうでした

実際、ネットには掘り出し物が転がっていることもあります

私が引っかかっているのは、車そのものではなく「見られない」という条件のほうです

同じ車でも、見て買えるなら答えは変わります

それから、売っているのがメーカーの販売店の認定中古車なら、話は少し変わります

品質の高い車が多く、失敗が少ないので、急いで選ぶときや、どうしても見ないで選ぶときは、私は認定中古車をおすすめしています

ディーラーが完璧というわけではありませんが、比べれば安心できるほう、と思っていただくとちょうどいいと思います

見られないぶんは、値段では取り返せません

実車を見に行くと、写真では分からないことが分かります

においと、傷です

特ににおいは、写真にも動画にも写りません

タバコやペット、湿気のにおいは、あとから消すのがとても難しくて、乗るたびに気になります

傷のほうも、光の当たり方や角度で見え方が変わるので、写真だけでは判断が難しいところです

お店に聞けば、においや傷のことを教えてもらえることもあります

ただ、見られない売り方だと、たいてい車は遠くにあって、あいだに何人ものスタッフさんが入ります

そのうえ、傷やにおいをどこまで気にするかは人それぞれなので、すべてを言葉で伝えきるのは、お店にとっても難しいんです

逆に、写真に写っている傷をどう判断すればいいのかは、こちらにまとめています

中古車の下回りが傷だらけ?樹脂か金属かを見て、写真だけで決めず実車で確認
中古車の下回りが傷だらけ? 見るのは傷の深さではなく、錆びる場所かどうかです中古車サイトの写真で下回りが傷だらけに見えても、見るのは傷の深さではありません。元1級整備士が、錆びる場所かどうかで見分ける物差しと、写真を拡大する・リフトで見せてもらう・修復歴を聞くという3つの確認方法をお話しします。...

そしてもうひとつ、見落とされやすいものがあります

買ったあとに「なんだか気になることがある」と思ったとき、相談しに行ける場所があるかどうかです

中古車は、買った直後に小さな不具合や疑問が出てくることがあります

そのとき、車を持ち込んで見てもらえる相手がいるかどうかで、気持ちがずいぶん変わります

この2つは、値引きでは埋められません

だから「そのぶん安いなら」という考え方が、この買い方ではあまり効かないんです

安く買えたとしても、あとからモヤモヤが残ると、なんだか割高に感じてしまうものです

実車を見に行けるときに、どこを見ればいいのかは、こちらにまとめています

中古車の現車確認はどこを見る?値引きより「タイヤを付けて」が通りやすい理由中古車を見に行く前に決めておくのは3つだけ。匂いと内装、整備の中身、エアコンの効きです。そして交渉は値引きより「タイヤを新品に」とお願いするほうが通りやすい理由と、実際に買われた方のご報告もお話しします。...

それでも、その一台は無駄になりません

ここからが、いちばんお伝えしたいところです

見つけた一台を諦めることになっても、その時間は無駄になりません

理由は2つあります

① 相場が分かったこと自体が、収穫です

全国の在庫を調べてみるのは、まったく損ではありません

むしろ、やっておいたほうがいいくらいです

その一台が教えてくれたのは「この年式・この距離なら、だいたいこれくらい」という物差しです

物差しを持たないまま近所のお店へ行くと、出された金額が高いのか安いのか分かりません

調べたぶんだけ、次の商談が落ち着きます

② 同じ条件で近くを探すと、似た車が見つかることがあります

そして、こちらのほうが実際に効きます

全国で探していた条件を、そのままお住まいの地域に絞って、もう一度検索してみてはいかがでしょうか

同じくらいの年式、同じくらいの距離の車が、意外と近くにあったりします

中古車を探すときに、私がいつもおすすめしているのも、地元の地域に絞って探す方法です

ネットで見つけた一台は「探し方の見本」だったと考えると、ちょうどいいと思います

条件をそのまま持って、今度は足を運べるお店で同じものを探す

そうすれば、見たうえで買えます

私がネットで買うとしたら、条件はここまで厳しくなります

参考までに、もし私自身が実車を見ずに買うとしたら、という話をします

かなり狭い条件になります

・走行1万km以内、年式3年以内

ほぼ壊れないだろう、と言い切れるくらいの一台です

・紹介文と、売っているお店が信頼できること

・写真が多いこと

せめて、掘り出し物を狙うとしても、走行3万km・5年以内までにしたいところです

4万kmを超えてくると「前のオーナーさん、オイル交換はちゃんとされていたかな」と気になってきてしまいます(笑)

今回ご相談いただいた一台は、ご相談の時点で3年ほど、4.5万kmでした

年式は物差しの内側ですが、距離が少し外れます

もちろんこれは、あくまで私の感覚です

もっとゆるい基準でうまくいっている方もいらっしゃると思います

お店に行けるなら、聞けることがあります

4万kmを超えた車の不安は、じつはお店で解消できることがあります

実車を見に行ったときに、こう聞いてみてはいかがでしょうか

「整備の記録簿、見せていただけますか」

オイル交換や点検をいつ受けてきたかが残っていれば、それだけで安心感が違います

メーカーの販売店で半年ごとの点検を受けてきた車だと分かることもあります

これは、ネットの掲載ページには載っていない情報です

人に聞かないと出てこない情報だ、ということでもあります

もし、そうしたやり取りに自信がなければ、先ほどお伝えした認定中古車から探すのもひとつの手です

点検と整備をしたうえで出しているので、当たり外れの幅が小さくなります

保証の長さは年式やお店によって変わりますので、「無料の範囲で、保証はどこまで、何年付きますか」と契約の前に確かめてみてはいかがでしょうか

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予算が足りないと感じたら、装備で削れます

ここで、もうひとつだけ

ご相談をいただいたとき、私は逆に質問をお返ししました

「いま乗っているお車で、不満だった点はありますか」

「せっかく買うなら、これだけは譲れないという装備はありますか」

この2つを決めておくと、探す範囲がぐっと絞れます

そして、ここが効くところです

装備は、予算を動かせるレバーになります

たとえば、電動のスライドドア

あると便利ですが、「なくてもいい」と決められると、それだけで結構な金額が削れます

同じ車種でも、グレードを1つ下げると価格帯が変わります

ハイブリッドではなくガソリン車を見てみる、という手もあります

燃費の差でその価格差を取り返すには、かなりの距離を走る必要がありますので、長く乗るならガソリン車も十分に選択肢です

つまり「この予算では無理そうだ」と思ったときに、いきなり年式や走行距離をゆるめなくても大丈夫ということです

先に装備から削ってみてはいかがでしょうか

年式と距離は、車の程度そのものに直結します

そこは最後に触るところです

ピゴス
ピゴス

とはいえ、私も人のことは言えません

調べれば調べるほど、グレードの高いものが欲しくなってしまうんです

たぶん自分で選んだら、いちばん装備のいいグレードにしちゃうと思います(笑)

中古車の探し方そのものは、こちらにまとめました

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まとめ

  • 実車を見られない中古車は、私なら買わない(車に詳しくない方ならなおさら)
  • 理由は車の良し悪しではなく、見られないぶんを値段では取り返せないから
  • 写真に写らないのは、においと、買ったあとに相談できる相手がいるかどうか
  • それでも、見つけた一台は無駄にならない。相場の物差しになる
  • 同じ条件で近くを探し直すと、似た車が見つかることがある
  • 予算が足りないときは、年式や距離より先に「装備」から削る
  • 実車を見に行けたら「整備の記録簿、見せていただけますか」と聞いてみる

ネットで探すこと自体は、悪いことではまったくありません

むしろ、ここまで調べていらっしゃる時点で、損をしにくいところに立っていらっしゃいます

最後のひと手間だけ、足を運ぶほうに回してみてはいかがでしょうか

【おまけ】売るときは、逆にネットのほうが向いています

ここまで「買うときは実車を見て」とお伝えしてきました

ただ、売るときは話が逆になります

売るときに動くのは、自分の車ではなく、買い取るお店のほうだからです

高く買ってくれるなら、少し遠くのお店でも問題ありません

遠方の業者さんまで視野に入れた乗り替えのコツは、こちらにまとめています

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ご相談者さまの、その後

このご相談には、続きがあります

お返事をお送りしてから13分後に、こんなメッセージをいただきました

「オンラインは玄人、そうですよね。この金額の買い物をAmazon感覚でネットで買うのは怖かったので、教えてもらえて良かったです」

この方は、もともと怖かったんです

背中を押してほしくて聞いたのではなく、立ち止まっていい理由を探していらっしゃった

そして、こう続いていました

「少し焦りもあったので、アドバイスを頭に入れて、少し落ち着いて考えてみたいと思います」

車検の期日が迫っていて、通勤の足が要って、探す時間もない

その状態で見つけた一台でした

だから、この記事でお伝えしたかったのは「ネット購入は危ない」ということではありません

焦っているときに見つけた一台は、いつもより良く見えるということのほうです

焦ってよく分からない1台を買ってしまうと、10万〜20万円、それ以上の損につながることもあります

焦りのもとが「次の車がないと通勤できない」ことなら、格安レンタカーを1〜2か月借りて、探す時間を作るという手もあります

じつはこの方にも、2日前のご相談のときに、月ぎめのレンタカーでつなぐ道をお伝えしていました

安く借りられるレンタカー会社は、こちらにまとめています

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もし、いま同じところで迷っていらっしゃるなら、その違和感のほうを信じてみてください

190万円は、大きな買い物です

その金額を、見ないまま決めてしまわなくていいと思います

ネットで見つけた一台は、探し方の見本として持っておいて、同じ条件で近くを探し直す

遠回りに見えて、こちらのほうが早いことが多いです

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ピゴス
ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、記事の下のコメント欄でいつでも承っております。ニックネームもメールアドレスも要りませんので、お気軽にどうぞ!