下回りの錆止めをDIYで いちばんの難所は、車を安全に上げることでした

点検のたびに、下回りのサビを指摘されるようになった。
言われるほど気になってきて、動画を探してみる。
すると、思っていたより簡単そうに見えます。
車をちょっと持ち上げて、その下に体を滑り込ませて、刷毛でサッと塗っていく。
特別な工具も、使っていないように見える。
「これなら、自分にもできそうだ」
そう思って、道具を調べはじめた方に、私なりの考えをお伝えします。
いちばんの難所は、「塗ること」ではありません。
「安全に車を上げること」です。
ここだけは言い切らせてください。
ジャッキやブロックに車の重さを預けて、その下に体を入れてはいけません。
ただ、そこで焦らなくて大丈夫です。
多くの方は、そもそも「塗る」より手前で止まります。
そして、車を上げる場所は、買わなくても借りられます。
まずは、いただいたご相談です
下回りのサビが気になっているので、DIYで処理するために準備中です。
前輪のみ、または後輪のみを段差プレートに乗り上げて、床下に潜って作業します。
高さが足りない場合の代案として、ブロックも入手予定です。
乗り上げ時は倒壊や脱輪のリスクがあるので、付き添いの人に誘導してもらいます。
保護眼鏡も、あった方がよいと思うので用意します。
マフラー周りの塗布は見送ります。
見落としや注意点、他に必要な準備物、改善点などがありましたら、ご意見をいただけたら幸いです。
図面まで添えられた、とても丁寧な計画でした。
危ないところも、ご自身で先に挙げられています。
だからこそ、最初にお伝えしておきたいことがあります。
正直に言うと、この方法は私も経験がありません
私がやったことがあるのは、リフトで上げて、自分が立てる状態での下回り塗装です。
あとは、タイヤを外して、その奥のアームなどに軽くスプレーで防錆塗装をするくらい。
車をブロックなどに乗せてスペースを作る作業は、オイル交換のときにやったことがある程度です。
ですから、ここから先の話には想像が混じります。
参考までに聞いていただけたらと思います。
ただ、ひとつだけ言い切れることがあります
車の重さを支えているのがジャッキやブロックなら、その下には入らない。
これだけは、経験の有無に関係なくお伝えできます。
ジャッキは「上げる」ための道具で、「支え続ける」ための道具ではありません。
コンクリートブロックも、上から押される力には強くても、横からの力や一点に集まる荷重には弱く、欠けたり崩れたりすることがあります。
どうしても潜るなら、「リジットラック」という、車体を支えるための専用の台を使ってください。
ウマ、ジャッキスタンドとも呼ばれます。
ジャッキで上げたら、ウマをかけて、車の重さはウマに預ける。
平坦で固い地面の上で、というのも条件です。
ただ、ここで身構えなくて大丈夫です。
というのも、多くの方は「潜る」より手前で止まるからです。
実際、ご相談者さまは塗る前のところで止まりました
この方は、計画どおりに段差プレートで予行演習をされました。
その報告が、こちらです。
【完敗】
段差プレート乗り上げ予行演習しました。
結果、荷重に耐えられず、段差プレートが重りごと後方に滑って、登ることさえ出来ず。
プレートの後ろに10キロ以上の重りを置いても、変わらなかったそうです。
平らな場所で何度もやり直しても、結果は同じでした。
駆動輪でないと、スロープには登れません
原因は、あとから分かりました。
この方のお車は前輪駆動で、サビが目立つのは後ろ側。
だから、後ろから登ろうとしていました。
でも、スロープを押し上げる力を持っているのは、エンジンの力がかかっている駆動輪のほうです。
駆動していないタイヤは、スロープを押すのではなく、ただ前へ押されるだけ。
ご本人の言葉を借りると、「ガガガガッと音を立てて滑っていくだけ」でした。
そして、こうも書かれています。
簡単そうに見えましたが、世の中そんなに甘くはなかった。
参考にされていた動画では、ブロックにサクッと乗り上げて、下に潜って塗っていたそうです。
動画に映っていないのは、その車がどちら駆動で、どちらのタイヤから登ったか。
そこが合っていないと、そもそも上がりません。
塗る作業そのものも、壁や床とはわけが違います
仮に、安全に上げられたとします。
次に来るのが、塗る作業です。
刷毛で塗る場合、車の下では毛の部分が上、持つ柄のほうが下になります。
つまり、塗料が柄をつたって、手のほうにぽたぽた流れてくる可能性があります。
それなりにドロドロした液だとしても、壁や床に塗るのと比べると、やりにくいと思います。
これは、ご相談者さまの予行演習でもそのとおりになりました。
やはり液垂れは、かなりありました。
床下に潜るには、液を被る覚悟が必要で、保護眼鏡無しでは自殺行為のようです。
保護眼鏡を最初から準備リストに入れておられたのは、さすがだと思いました。
スプレー缶の場合も、缶を上に向けて使うことになります。
すると、出が悪くなったり、広い範囲に薄く均一に乗せるのが難しくなったりします。
錆止め剤は、安い商品ではありません。
買ってから後悔することのないよう、ここはご注意くださいませ。
上げる場所は、買わなくても借りられます
ここまで読んで、諦めた方がいいのかな、と思われたかもしれません。
でも、道はもうひとつあります。
ご相談者さまが、ご自身で見つけられた道です。
どこか対応してくれそうな整備工場を探して、設備だけ借りて、DIY処理できたりしない?
レンタルピット、レンタルガレージ、レンタルリフトなどと呼ばれる場所があります。
作業スペースとリフトを時間で貸してくれて、作業は自分でやる、という形です。
リフトで上げられれば、寝転がるのではなく、立ったまま塗れます。
液が垂れてくる問題も、上げる高さの問題も、同時に片づきます。
リフトが使えると、だいぶ塗りやすいですよ。
ひとつだけ、借りるスペースを汚すわけにはいかないので、下に敷くビニールシートは必須だと思ってください。
風で飛ばないようにさえすれば、安いもので大丈夫です。
見学だけさせてもらえるところもあります。
リフトはご自身で操作することになるので、使い方を先に見ておくと安心です。
このご相談には、車屋さんをされている方も回答してくださいました。
設備の話として、とても大事なことをおっしゃっています。
自動車メンテナンスは設備や工具の豊富さで大きく効率や作業安全性が左右されます。
特に安全性の面では、自転車やバイクとは大きさも重さも桁違いなので、ミスした場合のダメージは大きいです。
車に損傷が出てもお金で解決できますが、ご自身のお身体に何かあったら、取り返しがつかない場合もありますし、コスパどころではありません。
※ 車屋さんを営んでおられる方が、このご相談に寄せてくださった言葉です。
設備で安全性が変わる、というのはそのとおりだと思います。
裏を返せば、設備さえ借りられれば、その差はかなり縮まる、ということでもあります。
そもそも、なぜ塗りたいのでしょうか
ここで一度、戻ってみたいところがあります。
「なぜ、下回りの錆止めをしたいのか」
目的によって、やる価値が変わってくるからです。
- 目的A:ボディと同じように、下回りもきれいに保ちたい(見た目)
- 目的B:あと10年、20年と、この車に乗り続けたい(長く乗る)
- 目的C:サビで将来トラブルが起きるのが、なんとなく心配
- 目的D:まだ買い替えたくない。だから、少しでも延命したい
Bの「長く乗りたい」がはっきりしているなら、しっかりした錆止めをする価値はあると思います。
Aの見た目も、こだわりがあるなら立派な理由です。
迷うのは、CとDです。
Cの「なんとなく心配」なら、たぶん不要です
最近の車は、昔に比べて格段に錆びにくくなっています。
表面的なサビは出ますが、それで機能が落ちるかというと、そうでないことのほうが多いです。
そして、ここは大事なところなのですが。
少し錆止めをしたから防げる、というものでもありません。
部品の交換が必要になるときは、塗っていてもなります。
とくにマフラーは消耗品です。
外側からだけでなく内側からも傷んでいきますし、排ガスをきれいにする機能が落ちて交換になることもあります。
外から塗って止められる種類の傷み方ばかりではない、ということです。
やることがあるとすれば、車検や点検のときに勧められる錆止めを、ていねいに断ること。
それと、融雪剤をまく道を走ったら、下回りを水で洗い流すことです。
Dの「まだ買い替えたくない」は、少し話が変わります
じつは、今回のご相談者さまがお持ちだったのは、この気持ちでした。
今はとにかく買い時ではないので、やらないよりはマシかもしれない錆び止めで、少しでも延命です。
貴重な種銭を守らなくてはなりません。
そして、こうも書かれていました。
「けっこう錆びてますね、トラブルも増えますし、そろそろ新車に替えましょうよ」見積もりは残価設定ローン、、、あるあるですよね。
この感じ、伝わる方は多いと思います。
サビの話をしているつもりが、いつのまにか乗り替えの話になっている。
だから自分で守りたくなる、という順番です。
その気持ちは、まっとうだと思います。
ただ、守り方としては、順番があります。
錆止めを塗ることは、その順番の先頭ではありません。
先に効いてくるのは、融雪剤を洗い流すことです。
お金もかかりませんし、今日からできます。
そのうえで、乗り続けるために本当に効くのは、オイル類をきちんと替えることや、壊れたところを早めに直すことのほうです。
「そろそろ買い替えでは」と言われたときに、こちらが持っておきたいのは、塗膜ではなく整備の記録です。
下回り塗装そのものの要否は、こちらでくわしくお話ししています。
車検のときに勧められる黒い塗装については、こちらです。
まとめ
- いちばんの難所は「塗ること」ではなく「安全に車を上げること」
- ジャッキやブロックに車の重さを預けて、その下に体を入れない
- スロープに登れるのは駆動輪のほう。前輪駆動の車で後ろから登るのは難しい
- 刷毛もスプレーも、下から上に向けての作業は壁や床とはわけが違う
- 上げる場所は、買わなくても借りられる(レンタルピット・レンタルガレージ)
- 「なんとなく心配」が理由なら、洗い流すだけで足りることが多い
DIYそのものを止めたいわけではありません。
自分の手でやる楽しさも、コツコツやる時間が好きだという気持ちも、よく分かります。
私が勝手に難しいと思っているだけで、器用な方にはそうでもないのかもしれませんしね(笑)
危険のない範囲でなら、挑戦されるのも良いと思います。
ご相談者さまの、その後
この方は、そのあともずっと報告を続けてくださいました。
段差プレートは諦めて、レンタルガレージを探して、見学に行って。
そして、数か月後。
リフトで上げて、ご自身の手で塗り上げられました。
出来は決して良くないし、完成ともいえませんが、とにかく「やった!」感はありました。
刷毛だけだったので届かなかった場所があり、ホイールを外していないのでその奥は次回。
高圧洗浄や脱脂もしていないので、完璧ではない。
それでも、やり切られました。
写真を見せていただいたのですが、なかなか綺麗に置換されていくものですね。
最初の状態を知っているので、「おおー」という感じでした。
錆の置換はバイクで少しやったことがあるのですが、あれ、気持ちが良いんですよね。
そして、この方が最後に書かれた一文が、この記事でお伝えしたかったことかもしれません。
当初考えていた「スロープに乗り上げての塗布作業」は、ほぼ無理かなと思いました。
実際にやり遂げた方の結論が、これです。
もうひとつ、報告がありました。
見送るはずだったマフラーにも、試しに塗ってみたそうです。
結果は、こうでした。
マフラーはよく錆びてます。
DIYで錆止めを塗りましたが、焼けました。
マフラーは走ると高温になるので、熱に強くつくられた塗料でないと、こうなってしまうようです。
ご本人が最初の計画で「マフラー周りの塗布は見送り」と書かれていたのは、正しかったということになります。
遠回りに見えて、この方は最初から、いくつも正しい判断をされていました。
倒壊のリスクを見越して付き添いを頼んだことも、保護眼鏡を用意されたことも。
足りなかったのは知識ではなく、設備のほうだったのだと思います。
下回りの錆止めで疑問や不安がある場合は、「X」「お問い合わせ」「コメント欄」などでお気軽にご相談ください。
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