著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

テレビをつけたら、車のニュースが流れている。

しかもそれが、いま買おうとしている車の、そのメーカーの話だった。

昨日まで「これにしよう」と思っていたのに、急に手が止まる。

そんな経験は、ありませんでしょうか。

車のことに詳しくないほど、こういうときの不安は大きくなります。

何が起きたのかを自分で確かめるすべがありませんし、身近に聞ける方もいないからです。

✅ 結論からお伝えします

不正のニュースが出たからといって、そのメーカーの車が急に危ない乗り物に変わるわけではありません。

私が見ているのは、メーカーではなく「その1台の状態」「どこから買うか」の2つです。

そして今回のご相談で私がいちばん引っかかったのも、実はメーカーのほうではありませんでした。

ニュースが出た日も、その車の故障の可能性は昨日と変わりません

ディーラーにいたころ、リコールの案内が届いたあとに「危ないから、すぐに見てほしい」というお声をいただくことがありました。

お気持ちは、本当によく分かります。

自分の車に不具合があるかもしれないと聞かされて、平気でいられる方はいません。

ただ、そのとき私が心の中で思っていたのは、こういうことでした。

ピゴス
ピゴス

今日まで何事もなく走ってきた愛車ですから、その知らせが届いた今日も、故障の可能性は昨日と変わりませんよ

これは、現場ではお客様に面と向かって言えない言葉でした。

ご迷惑をお掛けしている側が「昨日と変わりませんよ」と言ってしまえば、開き直りに聞こえてしまうからです。

ですので、ここに書かせていただきます。

そのうえで、実務的にお伝えしたいことが1つあります。

発表の直後は予約が混み合いますので、慌てて駆け込まなくて大丈夫です。

むしろ少し落ち着いたころのほうが、整備士さんがその作業に慣れていて、素早く的確に対処してくれることもあります。

これは私の感覚ですが、待たされてイライラしながら預けるより、そのほうがお互いに気持ちよく終われます。

リコールの案内が届いたときに、受けるべきなのか・急ぐべきなのかは、こちらで詳しくお話ししています👇

【車検切れ】リコールは受けるべき?放置しても大丈夫?「損しない」ための判断基準車検切れの車にリコール通知が届いたけど放置して大丈夫?元整備士が、リコール対応の優先度と、もう乗らないなら早めに手放す損しない判断基準をやさしく解説します。...

いただいたご相談

今回のご相談を、内容を編集したうえで掲載させていただきます。

車の知識は初心者です。

中古の軽自動車の購入を考えていて、知り合いのお店から、11年落ちで2.9万kmの軽自動車をオークションで買わないかと教えてもらっている状況です。

ただ、最近ニュースになっているメーカーの問題について詳しく知らず、この車を買っても良いものか迷っています。

どこに気をつけたらよいのでしょうか。

(いま乗っている軽自動車は故障中/用途は主に通勤と休日の移動・車がないと暮らしが成り立たない地域/ご予算は30〜40万円・一括払い)

ニュースを見て一度立ち止まり、詳しくないと正直に書いたうえで、聞いてくださいました。

この順番で進む方は、そんなに多くありません。

そして私の経験では、この順番で進む方がいちばん損をしにくいです。

それでも「このメーカーで大丈夫なのか」が気になる方へ

ここから先は、私の感覚としてお聞きください。

もし本当に、そのメーカーの車がだめなのだとしたら。

新車も中古車も値段が一気に崩れて、それこそ大変な騒ぎになっているはずです。

ところが、そうはなっていません。

市場は、思っていたよりずっと静かなままでした。

もうひとつ、お伝えしたいことがあります。

この手の話は、中にいる方の声で明るみに出ることがほとんどです。

そして原因は、決める側が急ぎすぎたところにあることが多いんですね。

決めた側と、実際に手を動かして車を作っている方は、別なんです。

現場の方が、わざと粗悪なものを作っている。

私には、どうしてもそうは思えません。

それに、どのメーカーにも個別の不具合はありますし、リコールもあります。

ですのでこれは「気にしなくていい」という話ではありません。

「そのメーカーだけを避けても、あまり意味がない」という話です。

最後はご自身の判断になりますが、私はメーカーで選ぶのをやめました。

見るのは、1台ごとの状態です。

では、何で判断するのか

「いくらの車なら壊れないんですか」と聞かれることがあります。

答えは、金額ではありません。

私が見ているのは、次の3つです。

  • 年式が新しめであること
  • 走行距離が少なめであること
  • 整備の履歴(記録簿)が残っていること

この3つがそろっている車は、言いかえると「その車の一生のうち、まだ元気な時期」を買うということです。

メーカーがどこかという話は、この3つの前ではかなり小さくなります。

ただし、走行距離で読めるのは半分だけです

今回のお車は、11年落ちで2.9万kmでした。

距離だけを見れば、かなり少ないほうです。

エンジンの中は開けて見られませんので、走行距離が少ない車を選ぶこと自体は、前のオーナーさんのメンテナンス不足を避けるいちばん簡単な方法だと私は思っています。

目安としては、年8,000kmくらいまでのペースであれば少なめと見ていいと思います。

ただ、距離で読めるのは主にエンジンや足まわりの消耗です。

ゴムや電子部品は、距離ではなく「年数」で来ることがあります。

たとえばタイヤは、あまり乗らないことでかえってヒビが入りやすくなります。

ご相談の中には、5年ほどで運転支援のカメラが動かなくなってしまった車もありました。

ですので「走行距離が少ないから安心」を、ゴムや電子部品にまで広げないほうが安全です。

それに、あまり動かされていない車ほど、点検や油脂類の交換が後回しになっていることもあります。

だからこそ、整備の記録簿を見せていただく意味があるんですね。

11年という「年数」のほうは、そのまま受け止めておきたいところです。

距離が少なくて古い車と、距離が多くて新しい車。

それぞれの長所と短所は、こちらで比べています👇

中古車は走行距離が少なくて古いのと距離が多くて新しいのどちらが得 中古車を選ぶとき、「走行距離は少ないけど、年式が古い車」と「距離は多いけど、年式が新しい車」、どちらが得なんだろう、と迷いますよね。 ...

私がいちばん引っかかったのは、オークションで買うということでした

今回のご相談で、メーカーより気になったのがこちらです。

知り合いの車屋さんが、オークションで探して仕入れてくださるというお話でした。

これは、決して悪い話ではありません。

お店の仕入れに近い形で買える可能性がありますし、探してくださるのがプロなら、なおさら心強いです。

ただ、ひとつだけ性質が違うところがあります。

オークションで買うということは、現車を見てから決められないということです。

車に詳しくない方が現車で分かるのは、3つくらいです

正直に申し上げると、車に詳しくない方が実車を見て分かることは、そんなに多くありません。

車内の匂い。

目立った傷。

ひどいサビ。

だいたい、このあたりです。

エンジンの調子や走りの良し悪しは、実車を見ても簡単には分かりません。

これは整備をしていた私自身の、正直な実感でもあります。

それでも実車を見ていただきたいのは、匂いや内装が写真に写らないからです。

そして買ったあとに直しにくいところほど、写真には写ってくれません。

オークションで買うと、その数少ない手がかりまで見られないことになります。

ですのでオークション経由は、車に慣れている方向けの買い方だと私は思っています。

もちろん、信頼できるお店が現車の状態まで見て選んでくれるのであれば、話は変わります。

ここは「現車を見てから決めることはできますか」と、一度聞いてみるのがいちばん早いです。

実車を見に行けるときに、どこを見ればいいのか。

ここは1本にまとめてあります👇

中古車の現車確認はどこを見る?値引きより「タイヤを付けて」が通りやすい理由中古車を見に行く前に決めておくのは3つだけ。匂いと内装、整備の中身、エアコンの効きです。そして交渉は値引きより「タイヤを新品に」とお願いするほうが通りやすい理由と、実際に買われた方のご報告もお話しします。...

また、オークション代行そのものでつまずいてしまった実例も見てきました。

怖がらせたいのではなく、起こりうることを先に知っておいていただきたくて書いた記事です👇

【実録】中古車「オークション代行」は大丈夫?“史上最大級”トラブルに学ぶ損しない買い方中古車のオークション代行は初心者に危険?話題になった大きなトラブルをもとに、元1級整備士×元ディーラー営業が損しない安全な買い方を解説します。...

ご予算30〜40万円を、どう考えるか

先に申し上げておきたいことがあります。

ご予算を否定するつもりは、まったくありません。

事情があってその金額になることは、誰にでもあります。

そのうえで正直にお伝えすると、この金額でディーラーの認定中古車を見つけるのは、なかなか難しいのが実際のところです。

ですのでこの予算の中で、さきほどの3つの条件をどこまで上げられるか、という勝負になります。

いちばん効くのは、車を小さくすることです。

同じ金額でも、小さい車のほうが年式は新しく、距離は少なく、程度の良い1台が見つかりやすいからです。

ただ今回のご相談者さまは、すでに軽自動車を選んでおられます。

つまり、この手はもう使い切っておられます。

ですので残っているのは、整備の履歴を見せていただくことと、あと何年乗れそうかを一緒に考えてもらうことになります。

金額ではなく、あと何年乗れるかで見る

中古車を買ううえで大事なのは、あと何年乗れるかを意識することだと私は思っています。

そして、どんな故障のリスクがあるのかを、あらかじめ把握して覚悟しておくことです。

同じ金額でも、あと3年の車と、あと7年の車では、1年あたりの負担がまるで違ってきます。

計算そのものは、車両価格をその年数で割るだけです。

むずかしいのは、その年数のほうです。

そしてその年数を教えてくれるのは、カタログではなく、その車を実際に見てくれる方です。

同じ予算で、もっと長く乗れる1台を選ぶ考え方は、こちらで具体的に書いています👇

【予算50万円】中古のスライド軽は買い?同じ値段で「もっと長く乗れる」車の選び方予算50万円のスライドドア軽、その1台で大丈夫?同じ値段でもっと長く乗れる車との比べ方を、元ディーラー営業×元1級整備士が整理。損しない見極め方がわかります。...

いちばん早いのは、そのお店に聞いてしまうことです

今回のご相談者さまには、知り合いの車屋さんがいらっしゃいます。

これは、ご本人が思っておられる以上に大きなことです。

ディーラーの安心は「仕組み」が作ります。

マニュアルがあり、研修があり、純正部品があり、メーカーから情報が届く。

だから誰に当たっても、当たり外れの幅が小さくなります。

一方で、街の車屋さんの安心は「人」が作ります。

幅はありますが、良い方に出会えたときは、仕組みを超えてくることがあります。

すでに顔の見える1軒があるのなら、その方に率直に聞いてしまうのがいちばん早いです。

ピゴス
ピゴス

心無い業者さんがいるのは事実で、どうしても目立ってしまいます

ただ、それ以上に温かい気持ちで対応してくださる車屋さんがいるのも、また事実なんです

聞き方は、むずかしく考えなくて大丈夫です。

  • 「この車、現車を見てから決めることはできますか」
  • 「整備の記録簿は付いていますか」
  • 「名義変更や整備を入れて、支払いの総額はいくらになりますか」
  • 「買ったあとも、しばらく見ていただけますか」

この4つを聞いて嫌な顔をされるお店は、まずないと思います。

むしろ、ちゃんと考えているお客様だと受け取ってもらえます。

知識をつけるのは、お店を疑うためではありません。

お互いが気持ちよく取り引きするためです。

まとめ

  • 不正のニュースが出ても、その車の故障の可能性が今日から上がるわけではありません。慌てて駆け込まなくて大丈夫です
  • 判断はメーカーではなく、1台ごとに。年式・走行距離・整備の履歴の3つで見ます
  • 走行距離で読めるのは、主にエンジンや足まわり。ゴムや電子部品は年数で来ることがあります
  • オークション経由は、現車を見てから決められない買い方。車に慣れている方向けだと私は思っています
  • ご予算は否定しなくて大丈夫。その中で3つの条件をどこまで上げられるかで考えます
  • 迷ったら、知っている車屋さんに率直に聞く。それがいちばん早くて、いちばん安心です

ご相談者さまの、その後

この回答のあと、ご相談者さまからお返事をいただきました。

こちらの質問が抽象的すぎて回答しづらいと、後になって気づきました・・・

それにもかかわらず温かく分かり易い回答をいただけ、とても参考になりました!

しっかり自分で考えたうえで、販売先にも相談してみます

ご自身で考えたうえで、お店にも相談してみます、と書いてくださいました。

じつは、ここがいちばんお伝えしたかったところです。

ニュースは、車を選ぶ物差しにはなってくれません。

物差しになるのは、目の前の1台と、その車を一緒に見てくれる方です。

車がないと暮らしが成り立たない場所ほど、車選びでつまずいたときの痛みは大きくなります。

だからこそ急がずに、聞ける方に聞いてから決めていただけたらと思います。

中古車選びで疑問や不安ある場合は、「X」「お問い合わせ」「コメント欄」などでお気軽にご相談ください。

最新記事のアップもXでお伝えしておりますので、よろしければフォローよろしくお願いいたします

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ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、コメント欄や「X」などでいつでもメッセージを承っております。お気軽にどうぞ!