【被害者編】相手の保険で経済的全損。修理して乗り続ける?それとも乗り換える?

ご家族が運転している車が、うしろから追突された。
ケガはなかった。
それだけで本当にありがたいことなのに、数日後に保険会社から届いたのは「経済的全損です」という言葉でした。
直せるのに、直さないほうがいいと言われる。
そのうえ、家族が毎日乗っている車です。
修理して乗り続けるのか、この機会に乗り換えるのか。
決めるのはご自身なのに、判断する材料が手元にない状態だと思います。
このご相談のケースでしたら、私も「買い替え」を選びます。
理由の1番目は、感情ではなく数字です。
いま下取りに出したとしても、事故に遭っていなかったとしても、保険で補償される金額ほどの値段は付かないからです。
ただし「修理せずにお金で受け取る」場合、修理代と同じ額が出るとは限らない、という注意点があります。
ここは、あとで詳しくお話ししますね。
いただいたご相談
今回のご相談を、内容を編集したうえで掲載させていただきます。
先日、妻が追突事故の被害を受けまして、幸い身体は無事だったのですが、自動車が経済的全損となってしまいました。
相手の保険に特約がついていたため、全額修理代金が補償されるそうです(約65万円)。
元々、乗っていた自動車は下記です。
デイズルークス/平成26年6月登録/約35,000km走行
そこで、質問です。
皆様であれば、修理して乗り続けますか? 又は買い替えを検討しますか?
私としては、頻繁に子供が乗る車であり、心理的に修理しても少し走行に不安があること、登録から約10年であることから、これを機に買い替えてもいいのかなと思っています。
この度は、奥様が事故にあわれてしまったということで、大変、お気の毒でございます
ケガがなかったということを聞いて一安心ですが、精神的にも不安な気持ちは残るでしょうし、どうか無理をなさらずにお過ごしくださいませ
私も、ご相談者さまと同じく買い替えを検討します
理由は3つあります。
① 下取りに出しても、その金額は付かないから
いちばん大きい理由が、これです。
登録から10年ほど経った軽自動車を下取りに出したとして、事故に遭っていなかったとしても、65万円という金額は付きません。
つまり今は、事故に遭ってしまったことで、逆に本来の価値より高い金額が動く状態になっています。
もらえるうちにもらって乗り換えたほうが、損をしない可能性が高いというのが私の考えです。
嫌なことがあった分、破格で車を買い取ってもらえるチャンスと考えると、いくぶん気持ちが軽くなるかもしれません
② 修理すると「修復歴」が残ることがあるから
追突の程度によっては、修理をすると「修復歴あり」の車になってしまうことがあります。
そうなると、次に手放すときの下取りや買取の金額が、はっきり下がります。
そして、ここが大事なところです。
その価値の低下までは、保険会社は補償してくれません。
修理代は出るけれど、修理したせいで下がった価値は自分もちになる、ということです。
③ 新しい車になるメリットがあるから
どんな車を購入するかにもよりますが、新しい車に替われば、衝突にまつわる安全性が高まったり、快適性が上がったりします。
お子さんが頻繁に乗るお車ということですので、ここは素直に大きいと思います。
あくまで私の感覚ですが、事故のあとに前を向くきっかけにもなります。
そもそも「経済的全損」とは何なのか
少しややこしい言葉なので、整理しておきますね。
全損には、大きく2つあります。
- 物理的全損=修理そのものができない状態(骨格が大きく歪んでいるなど)
- 経済的全損=修理はできるけれど、修理代がその車の時価額を超えている状態
今回は後者です。
保険会社の立場からすると「直すより、その分をお支払いするほうが筋が通る」という判断になります。
そのうえで今回は、相手の保険に特約が付いていたため、時価額を超える修理代まで補償される形になっています。
これは正直に申し上げて、相手の方がその特約を付けていてくださったおかげです。
こういう特約は、付けるか付けないかで意見が分かれるものでもあります。
ですので「付けていないと危ない」という話ではなく、今回は運が良かった、と受け止めていただくのがちょうどいいと思います。
保険金の使い道は、大きく2つあります
ここ、意外と知られていないところです。
補償されるお金は、かならず修理に使わないといけないわけではありません。
大きく分けると、道は2つです。
① そのまま修理して、乗り続ける
いちばん多いパターンです。
補償されたお金でそのまま直して、車は元どおりになります。
お店も見積もりに時間をかけてくださっているので、自然とこの流れになりやすいです。
決して悪い選択ではありません。
② 修理せずに受け取って、乗り換える
修理をせず、そのお金を次の車の資金にする道です。
今回のように、修理すると修復歴が残りそうな場合は、こちらのほうが結果的に損をしにくいことがあります。
ただし、ここに大事な注意点があります。
修理せずにお金で受け取る場合、修理代と同じ額が出るとは限りません。
修理を前提にした補償と、車の時価をもとにした補償とでは、考え方が変わってくるためです。
ですので「65万円がまるごと自由に使える」と思い込んで次の車の予算を組むのは、少し危ないです。
早い段階で、保険会社の担当者さんに「修理しない場合はいくらになりますか」と聞いておいてください。
この一言を聞いておくだけで、次の車の予算が現実的なものになります。
聞きにくい質問ではありませんので、遠慮なさらなくて大丈夫です。
お子さんが乗る車だから、という気持ちについて
ご相談者さまが一番引っかかっておられるのは、ここではないでしょうか。
お子さんが頻繁に乗る車だから、直しても心理的に不安が残る。
このお気持ちは、とてもよく分かります。
大切な人を乗せる車となれば、なおさらだと思います。
そのうえで、私からお伝えしたいことが1つあります。
その不安を「気にしすぎ」と片づけないでいただきたい、ということです。
乗るたびに事故のことを思い出してしまう車に、この先何年も乗り続けるのは、しんどいです。
修理して問題なく走るとしても、気持ちのわだかまりまでは直りません。
そして今回は、そのわだかまりを引き受けなくても済む選択肢が、たまたま手元にあります。
これは、あくまで私の考えです。
ですが、こういうときは気持ちのほうを優先しても、損にはならないと思っています。
ふだんの私は、乗り続けるほうをおすすめしています
ここまで買い替え寄りの話をしてきましたので、基本のスタンスもお伝えしておきますね。
事故や大きなトラブルがない限り、車は乗り続けたほうがコスパは良いです。
10年、15年と乗り続けたほうが、維持費の全体で見れば安くつきます。
乗り換えたほうがいいと私が考えるのは、次のようなときです。
- 直せない、または直す意味がなくなったとき(今回はここです)
- 修理代が、同じくらいの車を買える金額を超えてしまうとき
- 家族が増えるなど、暮らしのほうが変わったとき
- その車が、いまの暮らしに対して大きすぎるとき
今回は1つ目に当たります。
ですので「乗り続けたほうがコスパが良い」という私の基本と、今回の「買い替え」は矛盾していません。
事故がなければ、車はどこまで乗れるのか。
10年10万kmという言葉の実際のところは、こちらで書いています👇
事故のあとは、車を選ぶ余裕がありません
ここは、あとになって気づいたことです。
ご相談者さまはこのあと、保険会社や弁護士とのやり取りでバタバタされて、落ち着いて車を選ぶ時間が取れなかったそうです。
これは、決して珍しいことではありません。
事故のあとは、やることが一気に増えます。
その状態で車を決めると、たいてい急ぎの買い物になります。
ですので、ひとつだけ現実的な工夫をお伝えします。
相手の保険会社からレンタカーを借りている場合、それを慌てて返さないことです。
修理するか乗り換えるかを検討している間は、まだ結論が出ていない期間です。
その期間を使って、次の車が納車されるころにレンタカーを返せると、いちばん無駄がありません。
移動に困らないまま、落ち着いて選べます。
これは私の経験からのおすすめですので、実際の期間は保険会社の担当者さんとご相談くださいね。
こういう場面で効いてくるのが、レンタカーの特約です。
ふだんは地味ですが、いざというときの安心感が違います👇
そして、落ち着いて選べるようになったあとの話も、置いておきますね。
ご相談者さまはこのあと、軽自動車の候補を2台まで絞られて、もう一度ご相談に来てくださいました👇
次の車の保険も、いっしょに見ておきましょう
車が変わるタイミングは、保険の内容を見直す数少ないチャンスでもあります。
全損になったときの扱いは、保険会社によって少しずつ違います。
いま慌てて決める必要はまったくありませんが、次の車が決まるころに一度だけ見ておくと安心です。
順番としては、こちらの2つが分かりやすいと思います。
まずは、自動車保険の考え方を整理する
そのうえで、複数社をまとめて比べてみる
比べるだけなら費用はかかりません。
まとめ
- このケースなら、私も買い替えを選びます。下取りに出しても、その金額は付かないからです
- 修理すると修復歴が残ることがあり、その価値の低下は保険では補償されません
- お金の使い道は、修理するか・修理せずに受け取って乗り換えるかの2つ
- ⚠️修理せずに受け取る場合、修理代と同じ額が出るとは限りません。先に担当者さんに聞いておいてください
- お子さんへの不安は、気にしすぎではありません。気持ちを優先しても損にはならないと思います
- ふだんは乗り続けるほうがコスパは良い。今回は例外に当たるケースです
- レンタカーを慌てて返さない。落ち着いて次の車を選ぶ時間を作れます
ご相談者さまの、その後
この回答のあと、ご相談者さまからお返事をいただきました。
破格で車を買い取ってもらえたと考え、やはり買い替えを検討していきます。
事故後の保険会社や弁護士とのやり取りでバタバタして落ち着いて車の選定が行えていませんが、少しずつ調べてみます。
今回もご助言頂きありがとうございました
「破格で車を買い取ってもらえたと考え」という言葉を、そのまま使ってくださいました。
同じ出来事でも、どこから見るかで気持ちの重さが変わります。
事故に遭ったことは、取り返しのつかない嫌な出来事です。
それでも、この車が最後にご家族を守って、次の車のための資金まで残してくれた。
そう考えられたなら、それがいちばんいい着地だと私は思います。
どうか、焦らずに次の1台を選んでください。
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