事故のあとは、気持ちが落ち込んでいるときに、車屋さんや保険会社から、金額がいくつも届きます。

事故の車を買い取ってもらう金額、保険から出るお金、そしてローンの残り。

どの数字から見たら損をしないのか、分からなくなりますよね。

私も昔は、事故をしたら修理するものだと思っていました。

保険金を受け取って直さない、という選び方があると知ったのは、あとになってからです。

ローンが残っている車なら、先に1本だけ計算をすると、進む道が決まります。

✅ 結論からお伝えします

決め手は、ローンの残り(残債)が消えるかどうかです。

売ったお金と保険金で残債が消えるなら、私は乗り換えをおすすめします。

消えないなら、直して乗り続けるほうが、損は小さくなります。

どちらの場合も、「直してから売る」だけは選ばないでおきましょう。

「全損」と言われたときは、車が保険会社のものになるので、計算の1行が変わります。

著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

まずは、いただいたご相談です

車の入れ替えについてご相談があります。

先月、プリウスで事故に遭い、トヨタに修理を依頼しました。

事故後のプリウスの買取価格は120万円、保険で支払われる金額が80万円で、合わせて200万円ほどになります。

一方、残債が170万円ほど残っています。

トヨタさんからの提案では、プリウスをそのまま売却して残債を支払い、次の車の頭金として30万円を使うというものです。

ここで質問ですが、事故車のプリウスを修理してから売った場合と、修理せずにそのまま売った場合では、どちらの買取価格が高くなるのでしょうか?

また、修理してそのまま乗り続けることも検討しています。

方向性について教えていただけたら嬉しいです。

迷っていらっしゃるのは、3つの道です。

  • 直してから売る
  • 直さずに、そのまま売る(トヨタさんの提案)
  • 直して、乗り続ける

ご相談の時点では、修理の見積もりはまだ出ていませんでした。

ピゴス
ピゴス

大変な事故でしたね。

お車も大切にされていたようですから、ショックも大きかったと思います。

それでも、こうして数字を並べて相談してくださるくらい、しっかりされていて何よりです🐧

当時の私の答えは、3つでした

このご相談に、私はこうお答えしています。

修理して売るのは、一番損してしまいますので、修理をするのであれば乗り続けていただくのが良いと考えられます。

とはいえ、残債が残ってしまわないのであれば、新しいお車にお乗り換えを、私ならオススメしますね。

長い目でみて損しにくい選択かと考えられます。

3つに分けると、こうなります。

  • 「直してから売る」が、いちばん損
  • 直すなら、売らずに乗り続ける
  • 残債が残らないなら、乗り換える

この3つは、いまも変わりません。

分かれ道になるのは、3つ目の「残債が残らないなら」のところです。

残債が残るかどうかは、1本の計算で確かめられます。

先に、1本だけ計算します

並べるのは、3つの数字だけです。

売ったお金 + 保険金 − 残債(ローンの残り)

= 手元に残るお金

ご相談の数字を入れると、こうなります。

120万円 + 80万円 − 170万円

= 30万円

30万円が手元に残るので、残債は消えます。

トヨタさんの「次の車の頭金として30万円」は、この計算そのものです。

反対に、計算がマイナスになるときは、売っても残債を払いきれません。

ローンが残っている車を売るときは、売ったお金で残債を精算し、上回れば差額を受け取り、足りなければ不足分を払って手続きを進める形になります。

※MOTA車買取のよくある質問「ローンが残っている車は売れますか?」より(2026年9月に確認)。

残債は、ローン会社で確かめます

残債は、「170万円ほど」のままにせず、正確な金額をローン会社に確かめておきます。

残価設定ローン(残クレ)の場合は、最後に据え置いた分まで含めた金額が、残債になります。

残クレの途中で車を手放すときの確かめ方は、こちらでお話ししています。

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保険金が「修理代の分」か「全損の分」かを聞きます

トヨタさんの提案は、保険金を受け取ったうえで、車は直さずに売る、という形です。

この形がとれるのは、保険金が修理代の分として出る場合です。

保険金が全損として出る場合は、車の持ち主が保険会社に移るので、売ることができません。

全損のときの計算は、このあと別の見出しでお話しします。

事故の担当者さんには、「この保険金は、修理代の分ですか、全損の分ですか」と、1つだけ聞いておくと安心です。

直さずに受け取れるかどうかも、そのときにあわせて確かめておきましょう。

動かせるのは「売ったお金」の1行だけです

保険金と残債は、もう決まっている数字です。

3つの中で動かせるのは、売ったお金の1行だけです。

売ったお金が1万円高くなれば、手元に残るお金も1万円増えます。

トヨタさんの提案を最低ラインとして持ったまま、事故の車をそのままの状態で、ほかのお店にも見てもらう価値があるのは、このためです。

ディーラーに預けたままの事故車を、買取店に見てもらうときの頼み方は、こちらにまとめています。

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ローンが残っていることは、買取店に正直に伝えて大丈夫です。

残債の精算の手続きも、買取店に任せられます。

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「直してから売る」が、いちばん損な理由

直すのにかけたお金は、売るときの値段に、そのままは戻ってきません。

以前、ドアの傷を直してから乗り換えるか迷っていらっしゃった方にも、「3〜40万円掛けて直したとしても、買取額は3〜40万円も上がらないことがほとんど」とお答えしました。

大きな事故で車の骨格まで傷めている場合は、もう1つ理由が加わります。

車の「修復歴」です。

中古車の広告や店頭では、業界のルール(公正競争規約)で、修復歴があるかどうかを表示することになっています。

※自動車公正取引協議会の会員向けの資料(2019年3月・修復歴の判断基準の変更について)より(2026年9月に確認)。

修復歴になるのは、フレームやピラーのような、車の骨格にあたる部分を傷めたり、直したり、交換したりした車です。

バンパーやドアの修理だけなら、修復歴にはなりません。

※MOTA車買取のよくある質問「傷やへこみがある場合、『修復歴あり』になりますか?」より(2026年9月に確認)。

骨格を傷めた車は、きれいに直しても、修復歴は消えません。

修復歴は、次に買う人の「代わりの目印」です

修復歴は、次にその車を買う人が、事故の影響が残っていないかを推し量るための、代わりの目印なんです。

買う人には、どこがどう壊れて、どう直したのかを、自分で確かめる方法がほとんどありません。

だから、目印を見て、そのぶんを値段から差し引きます。

保険金の80万円で直しても、その80万円が売値に上乗せされるわけではありません。

だから「直すなら、乗り続ける」

反対に、直して乗り続ける本人は、どこをどう直したのかを知っています。

次に買う人と違って、代わりの目印に頼らなくても、中身そのものを分かっていられるんです。

ただ、目印に頼らないぶん、直したあとの見てもらい方は大事になります。

以前のご相談では、「手直しが必要(保証にて)な時にまた相談できるディーラーさん」に直してもらう価値をお伝えしました。

直したあとに気になることが出たとき、同じお店に相談できるかを、頼む前に確かめておくと安心です。

残債が消えるなら、乗り換えを

計算がプラスになるなら、私は乗り換えをおすすめします。

乗り換えれば、いまのローンはここで精算されて、30万円が次の車の頭金として手元に残ります。

直して乗り続けると、170万円のローンは、そのまま続きます。

どちらが良いかは、何年乗った車なのか、あと何年乗るつもりだったのかでも変わります。

私は、ローンをいったん終わらせられるなら、そのほうが長い目で見て損をしにくいと考えています。

ピゴス
ピゴス

じつは私の妻も、自損でぶつけてしまったときに、修理せずに保険金として受け取りました。

そのお金で、車を乗り替えています。

急ぐなら、トヨタさんの提案で決めても大丈夫です

トヨタさんの提案は、それだけで悪い話ではありません。

次の車を急いで用意したいなら、提案どおりに決めても大丈夫です。

手元を少しでも増やしたいなら、決める前に、ほかのお店にも見てもらいます。

時間とお金のどちらを優先するかで、決めてよいと思います。

次の車は、無理のない予算で

以前、Xに「貯蓄や予算以上の車をローン組んで買うのは、気をつけましょう」と書いたことがあります。

次の車は、手元に残る30万円と、無理なく払える金額の中で選んでいただけたらと思います。

お仕事で使う車が事故に遭って、次の一台を急いで用意しないといけないときの探し方は、こちらでお話ししています。

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💡 売ると決めた方へ

MOTA車買取なら、電話ラッシュなしで最大20社の査定額がわかります。

傷やへこみのある車も申し込めて、傷みの場所は写真で先に伝えられます。

※MOTA車買取のよくある質問「傷・へこみがある場合は申し込みできますか?」より(2026年9月に確認)。

ただし、買取店さんは、本気で時間を使って車を見に来てくれます。

数字の見当をつけたいだけの段階なら、まだ申し込まなくて大丈夫です。

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残債が消えないなら、直して乗り続ける

計算がマイナスになるなら、直して乗り続けるほうが、損は小さくなります。

売っても残債を払いきれず、足りない分を手元のお金から出すことになるからです。

故障した車で、売っても残りのローンをまかなえそうにない、というご相談をいただいたときも、「基本的には修理のほうが安上がりだと思います」とお答えしました。

修理代が、保険の上限に収まるかを見ます

直して乗り続けるなら、修理代が車両保険の上限に収まるかを、先に確かめます。

上限を超えると全損の扱いになって、計算の形が変わるからです(このあとの見出しでお話しします)。

足りない分を、次のローンに足さない

それでも乗り換えたいときに、私が避けてほしいと思うのは、足りない分を次の車のローンに足して借りる形です。

ローンの上にローンを重ねると、次の車も、同じ心配を抱えたまま乗ることになります。

乗り換えるなら、足りない分は手元のお金で払って、いまのローンを終わらせてからのほうが安心です。

そのぶん次の車は、お金が貯まるまでの最低限の車にしておく、という選び方もあります。

「全損」と言われたら、計算の1行が変わります

ここまでは、保険金が修理代の分として出る場合の計算でした。

「全損」と言われた場合は、話が1つ変わります。

全損として保険金を受け取ると、車の持ち主(所有権)は保険会社に移ります。

修理はできても、修理代が保険の上限を超えて全損になった場合も、基本的には、その車を直して乗り続けることはできません。

※アクサ損害保険「事故で車が全損になった場合」より(2026年9月に確認)。

保険金は、修理するかどうかに関係なく、車両保険の金額(上限額)が支払われます。

※損保ジャパンと三井住友海上のよくある質問(全損のときの車両保険金)より(2026年9月に確認)。

つまり、売ったお金の行が消えて、計算はこうなります。

保険金 − 残債(ローンの残り)

= 手元に残るお金

同じ80万円でも、全損の分として出たなら、80万円 − 170万円で、手元に残るどころか90万円のローンが残ります。

保険金が残債に届かないと、車はもう手元に無いのに、ローンだけが残ります。

車両保険が付いていなければ、相手のいない事故では保険金そのものが出ないので、170万円のローンがまるごと残ります。

私がローンの残っている方に、ローンを払い終えるまでは車両保険を付けておくのが無難だとお伝えしているのは、残るローンを少しでも小さくするためです。

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新車で買ってから年数の浅い車なら、新車特約(新車が全損になったときに、同じ新車を買い直せる金額まで出る特約)が付いているかどうかで、全損のときの保険金が大きく変わります。

ディーラーの営業をしていたころ、新車特約を付けていなかったために、250万円出るところが160万円になったお客さまもいらっしゃいました。

新車特約で受け取るには、次の車に買い替えるか、直すことが条件になります。

※アクサ損害保険「事故で車が全損になった場合」と、三井住友海上のよくある質問より(2026年10月に確認)。

全損と言われたら、いくら出るのかを、担当者さんにあわせて聞いておくと安心です。

どんなときに全損になるのか、仕組みはこちらでお話ししています。

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まとめ|「直してから売る」だけは選ばない

  • 決め手は、残債(ローンの残り)が消えるかどうか
  • 計算は1本だけ=売ったお金+保険金−残債
  • プラスなら乗り換えを(私のおすすめ)
  • マイナスなら、直して乗り続けるほうが損は小さい
  • どちらの場合も、「直してから売る」だけは選ばない(骨格を傷めた車は、直しても修復歴が消えない)
  • 動かせるのは売ったお金の1行だけ=事故の車のまま、ほかのお店にも見てもらう
  • 「全損」と言われたら、売ったお金の行が消える=保険金−残債

✅ 決める前のチェックリスト

  • ☑️ 残債の正確な金額を、ローン会社で確かめた
  • ☑️ 保険金が「修理代の分」か「全損の分」かを、事故の担当者さんに聞いた
  • ☑️ 事故の車を直さずに売ったら、いくらになるかを確かめた
  • ☑️ 売ったお金+保険金−残債を計算した
  • ☑️ 直して乗るなら、修理代が保険の上限に収まるかを見た
  • ☑️ 乗り換えるなら、足りない分を次の車のローンに足していない

計算を1本書いて残しておくと、迷ったときに見返せます。

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保険を使った翌年は、等級(保険料の割引・割増を決める段階)が下がって、保険料が上がります。

※アクサ損害保険「車両保険で修理費用はどこまで支払われる?使うと良い場合とは?」より(2026年9月に確認)。

乗り換えるときは、自動車保険も新しい車に入れ替える手続きが要るので、そのついでに見直してみてはいかがでしょうか。

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ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、記事の下のコメント欄でいつでも承っております。ニックネームもメールアドレスも要りませんので、お気軽にどうぞ!