車はローンで手元キャッシュを投資に回す戦略の隠れたリスク

欲しい車が決まって、代金も、現金で全額払えるだけの準備ができている。
ところが、投資を続けてきた方ほど、ここで計算が浮かびます。
🤔「カーローンは年2%台で借りられるし、運用で年5%前後が見込めるなら、差の3%ぶん、ローンを組んだほうが得なのでは…」
👀「でも、本当に、手元の現金を運用に回してしまっていいのかな…」
ローンと現金一括の差は、金利の総額だけです。
ご相談のころの年2%で、700万円を5年借りると、利息はおよそ36万円。
手元に残したお金を5年で36万円以上増やせれば、計算の上では「ローン+運用」の勝ちです。
ただ、決め手は計算ではなく、相場が下がったり、働けなくなったりした「最悪のとき」に耐えられるかです。
向いているのは、車を現金で買っても、まだ同じくらいのお金を運用に回せる方だと、私は考えています。
迷うなら、現金で買って、月々のローンの額を積み立てていく形もあります。
きっかけは、読者の方からのご相談
まずは、今回いただいたご相談の内容です。
年内をめどに、700万円前後の新車を買う予定です。
契約はすんでいますが、納車まで時間があるので、支払いは直前まででよいことになっています。
支払い方法は、全額を現金・全額をローン・一部をローン、の3つを考えています。
全額を現金で払う準備は、できています。
投資の経験は、10年弱あります。
カーローンは、年2%台で借りられるところがあります。
運用は、歴史的に見ると、長期で年5%前後が見込めると考えています。
単純に考えると差が3%なので、ローンを組むのがいいのでは、と思っています。
ご意見を聞かせていただけないでしょうか。
ご質問、ありがとうございます。
700万円前後の車を選ぶのは、人生を楽しむためにお金を使う、ということだと思います。
一括でドーンと買うのもよし、ローンで計画的に買うのもよし、です。
私も、運用がうまくいくなら、低金利のカーローンで手元の現金を残し、それを運用しつつ、ローンの金利以上に稼ぐというのは、考えなくもない方法です。
ただ、実際に車を何年乗るのか、高く売れる車なのかで、話は変わってきます。
なぜ「金利の総額」が、越えないといけない線になるのか
700万円の車を、5年乗って350万円で売ったら
当時、私がご相談者さまにお出しした例です。
700万円の車を5年乗って、350万円で売れたとします。
- 現金一括なら、出ていくお金は、700万円から350万円を引いた350万円
- ローン(年2%・5年)なら、返す総額はおよそ736万円なので、736万円から350万円を引いた386万円
差の36万円は、ローンの利息の総額です。
車の値下がりの350万円は、現金で買っても、ローンで買っても変わりません。
つまり、手元に残した700万円を、5年で36万円以上増やせれば、「ローン+運用」の勝ちということです。
当たり前の計算ですが、すべての出発点になります。
この36万円は、越えないといけない最低ラインです。
運用で増えた分に税金がかかるなら、税金を引いたあとで36万円が必要になります。
※ 元利均等返済で計算した概算です。
※ 実際の金額は、金利・返済期間・返し方によって変わります。
金利が上がると、越える線も上がります
同じ700万円を5年で借りても、利息の総額は、金利によって次のように変わります。
- 年2%なら、およそ36万円
- 年3%なら、およそ55万円
- 年4%なら、およそ73万円
金利が1%上がるごとに、越えないといけない線は、およそ19万円ずつ上がります。
ご相談をいただいた2023年2月は、日本銀行がマイナス金利を続けていた時期でした。
その後、日本銀行は2024年3月にマイナス金利をやめ、2026年9月には政策金利を1.25%程度まで引き上げています。
※ 日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」(2024年3月19日)と「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)より(2026年9月に確認)。
それでも、借りる額が大きいと、いまも年2%台で借りられる銀行はあります。
たとえば大手銀行のネット専用のマイカーローン(変動金利)では、借りる額が501万〜1,000万円なら年2.45%、200万円以下なら年3.50%です。
※ 三菱UFJ銀行「ネットDEマイカーローン」の公式サイトに載っている、2026年10月1日以降にお借入れする場合の金利です(2026年9月に確認)。
※ 金利は見直されることがあり、審査の結果によっても変わります。
9月までにお借入れする場合は、同じ帯で年2.20%と年3.25%でしたので、10月1日からのお借入れは、どちらも0.25%高くなります。
ご相談と同じ700万円を、年2.45%・5年で借りると、利息はおよそ44万円です。
ただ、変動金利のローンは、借りたあとも金利が見直されます。
同じ大手銀行の商品では、借りたあとの金利が、年に2回見直される決まりです。
※ 同じ商品の商品説明書(2025年10月1日現在)より(2026年9月に確認)。
運用がうまくいかない時期に、ローンの金利だけが上がる、ということも起こりえます。
ご相談のころの「2%台」を、そのまま前提にしないほうが安心です。
長いローンなら、勝ちやすい?
当時の私は、10年のローンもあるので、長くなるほど勝ちやすくなるかもしれない、ともお答えしています。
ただ、同じ700万円を年2%・10年で借りると、利息はおよそ73万円と、5年のときの倍ほどになります。
そして、そのあいだ700万円は、運用に置いたまま動かせないお金になります。
それでも問題ないという方なら、やってみる価値はあると思います。
ただ、私自身も、我が家のタント(ダイハツの軽自動車です)を、銀行の10年ローンで払っていたことがあります。
低い金利のほうが得だと考えていたのですが、うまくいきませんでした。
そのときの反省点と、300万円の車で計算した損得は、こちらにまとめています👇
隠れたリスクは、「相場が下がる」と「働けなくなる」が重なるとき
最終的には賭けの部分が残るので、どちらが正解ということはないと思います。
確実に勝てるほう(現金一括)を選ぶか、多少のリスクを負って、経済の成長に賭けるか。
結局、大事なのはリスク許容度です。
相場が下がったときに、働けなくなったら
ローンを組んで手元のお金を運用に回すと、借金と、値動きのあるお金を、同時に持つことになります。
もし、たまたま相場が大きく下がったときに、病気やけがで働けなくなったら。
運用しているお金は減っているのに、ローンの支払いは、毎月そのまま続きます。
当時の私は、ご相談者さまに「今は健康で稼ぎもしっかり安定的にあられると思いますが、どうなるか分からないこともあります」とお伝えしました。
翌日のお返事には、「働けなくなるところまで想定していなかった」とありました。
たまたま暴落がきたり、働けなくなったりしたら、身動きが取れなくなります。
車はカッコいいけど、そこまでリスクを負いたいほど、車が好きでしたっけ?
向いているのは、現金で買っても、まだ運用に回せるお金がある方
当時の私は、この作戦をおすすめできるのは、次のくらいの資金力がある方だとお答えしました。
- 車を現金一括で買っても、別に700万円を運用に回せる
- または、車はローンで買って、倍の1,400万円を運用に回せる
そのくらいの余裕がある方なら、攻めの姿勢で行くのも良いと、私も考えます。
反対に、貯金が1,000万円や2,000万円くらいで、700万円をまとめて失うかもしれない形には、リスクがあります。
そして、ローンの審査に通ることと、無理なく払えることは、別の話です。
そもそも「現金で無理なく買えるか」で迷っている場合は、決め方の順番をこちらにまとめています。
私なら、現金で買って、月々のローンの額を積み立てます
最後に、私の個人的な考えです。
もし私に資産と安定した稼ぎがあるなら、車は一括で買って、月々ローンで払うくらいの額を、積み立てで運用していきます。
次の車は、積み立てた分と、今の車の売却額を足した予算で選びます。
積み立てが増えていれば、少し上のグレードに。
減っていれば、少し下のグレードに。
車のほうで調整すると、ちょっと楽しい気がします。
この形は、手元のお金をまとめて運用に回すより、増える額は少なくなるかもしれません。
そのかわり、相場が下がったときにも、借金は抱えていません。
もちろん、運用には値下がりもあるので、あくまで余裕のお金があって、車が好きなことが前提です。
金利を低く抑える工夫と運用を組み合わせて、計画的に払っていく考え方も、私は好きです。
何にどう投資するかは、車屋の私がお話しできることではないので、書かずにおきます。
運用に回さずに、貯金でよけておく形でも、次の車を、また一括で買えます。
月々の額のよけ方と、それでもローンが役に立つ2つの場面は、こちらでお話ししています👇
ローンや残クレを、私が基本的に勧めていない理由は、こちらでお伝えしています👇
まとめ
カーローンを組んで、手元の現金を運用に回すか迷ったら、こんな順番で考えてみてはいかがでしょうか。
- ローンと現金一括の差は、金利の総額だけ(700万円・5年なら、ご相談のころの年2%でおよそ36万円、2026年10月からの大手銀行の年2.45%ならおよそ44万円)
- 手元に残したお金をそれ以上増やせれば、計算の上ではローン+運用の勝ち(金利が上がれば、越える線も上がる)
- 決め手は計算より、相場が下がることと働けなくなることが重なる「最悪のとき」に耐えられるか
- 向いているのは、車を現金で買っても、まだ同じくらいのお金を運用に回せる方
- 迷うなら、現金で買って、月々のローンの額を積み立てていく形もある
車を選ぶ段階から「リスク許容度の範囲内」で考える方法は、こちらでお話ししています。
ご相談者さまの、その後
翌日、ご相談者さまからお返事をいただきました。
「大きくキャッシュが出ることに不安を感じており、低金利で一部借り入れできるなら、バランスが良いように思いました」
運用は15年以上続けるつもりなので、今回の車には直接影響しないかもしれない、とも書かれていました。
そして、「人生のトータルとしてプラスになる考え方で生活できればと思います」と。
それから5か月ほどたったころ、ご相談者さまは、ご自身の払い方について、こう書かれていました。
「私は金利によっては残クレの方が良いと思っています」
「実際に、私も今年買った車で残クレにしました」
「借入の金利が低く、借りた分の資金を自分で運用したほうが儲かる、と思ったからです」
金利の低いローンを選んで、手元のお金は運用に回す。
リスク許容度と向き合ったうえで、ご自身で出された答えだと思います。
そして、「金利によっては」という言葉に、ご相談者さまの物差しが入っていました。
金利が上がれば、同じ答えにはならないかもしれない、ということです。
残価設定ローン(残クレ)の、月々が安くなる仕組みと最後の払い方は、こちらでお話ししています。
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車のことを、もう一度ゼロから整理したい方は、こちらの教科書ページもどうぞ。














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