車の暖房で燃費はほぼ落ちません 冷房は冬で5%、真夏で15%ほどです

冬の朝、寒いのに暖房をつけない。
夏の昼、暑いのに冷房をつけない。
ガソリン代のことを考えると、つい我慢してしまう。
でも、その我慢は、本当に得をしているのでしょうか。
じつは、暖房と冷房では、燃費への効き方がまったく違います。
仕組みが違うからです。
そこを知ると、我慢する場所と、しなくていい場所が分かれます。
ガソリン車・ディーゼル車なら、「暖房」で燃費はほぼ落ちません。
暖房は、どうせ捨てるはずだった熱を使っているからです。
落ちるのは「冷房」のほうで、目安は「冬で5%、真夏で15%」ほど。
そして、冬に燃費が落ちる本当の理由は、暖房ではありません。
冷えたエンジンを温めるのに、ガソリンを余分に使っているからです。
ただし電気自動車(EV)や日産のe-POWER、一部のハイブリッド車は例外で、暖房でも燃費や電費が落ちます。
まずは、いただいたご相談です
雪が降るようになり、朝の通勤時は気温0℃くらいです。
暖房はエンジンの熱を利用するから燃費は変わらないとよく聞きますが、これは本当でしょうか。
冷房もですが、明らかに加速が悪くなり、実際に燃費も悪くなりましたが、車種によりますか。
自分は省エネで自己満するために、一人で運転する時は暖房も冷房も使わないですが、年々体の代謝が悪くなりしんどくなってきました。
実際にはどうなんでしょうか。
最後の一文が、このご相談の本体だと思っています。
「一人のときは、暖房も冷房も使わない」
それを続けてきた方が、「しんどくなってきました」と書かれている。
聞かれているのは仕組みの話ですが、本当に必要なのは、たぶん別のものです。
先に、仕組みからお話しします。
そのあとで、我慢についてお話しさせてください。
冷房で燃費が落ちるのは、エンジンが原付を1台ぶん動かしているから
夏に冷房のスイッチを入れると、エンジンルームにある「コンプレッサー」という機械が動き始めます。
冷たい空気を作る心臓部です。
これを動かしているのは、エンジンの力です。
エンジンの横にベルトが付いていて、そのベルトでコンプレッサーを回しています。
冷房を使っていないときは、このコンプレッサーは空回りしている状態です。
ですから、燃費には影響しません。
スイッチを入れると、そこに力が伝わって、エンジンにとっての抵抗になります。
どのくらいの抵抗かというと、「だいたい原付バイクを1台動かすくらい」と言われています。
つまり、走りながら原付を1台引っぱっているようなものです。
その分だけパワーを奪われるので、加速が鈍くなり、燃費も落ちます。
軽自動車のようにパワーに余裕のない車では、はっきり感じられると思います。
信号待ちの間も、その原付は動き続けています。
だからアイドリング中も、ガソリンを余分に使います。
猛暑日ほど大きく、春や秋の夜は小さい
猛暑日は、その原付をフルパワーで動かしている時間が長くなります。
ですから、燃費の落ち方も大きくなります。
逆に、春や秋、夏でも夜なら、そこまでガソリンは食いません。
コンプレッサーがそこまで頑張らなくても、車内が冷えるからです。
「冷房=燃費が悪い」と一括りにしなくて大丈夫、ということでもあります。
暖房で燃費が落ちないのは、捨てるはずだった熱を使っているから
一方の暖房は、仕組みがまったく違います。
エンジンはガソリンを燃やして動くので、大量の熱が出ます。
この熱、出すぎるとエンジンが壊れてしまいます。
ですから車は、暖房を使っていなくても、常に冷却水で熱を運んで、大気中に捨てています。
暖房は、その「どうせ捨てるはずだった熱」を、車内に少し引き込んでいるだけなんです。
温風を出すために、追加でガソリンを燃やしているわけではありません。
だから、温度をいくら上げても、それ自体が燃費を悪くすることはほとんどありません。
あっ、厳密に言えば。
暖房を使うと、エンジンが適正な温度になるまでの時間が伸びるので、その分は燃費が落ちますね(笑)
でも、微々たるものです。
私は気にしていません。
ただし「A/C」ボタンを押すときは別です
冬に窓が曇って、「A/C」のボタンも押すことがありますよね。
あれは温風を出しながら、冷房の除湿機能を同時に使っています。
つまりコンプレッサーが動くので、そのぶんは燃費に効きます。
真夏ほどではありませんが、ゼロではありません。
もし「曇りだけを取りたい」のなら、外気導入にして暖房を入れるという手があります。
外の乾いた空気を入れるので、曇りが発生しにくくなります。
ただし冷たい空気を取り込むぶん、暖房の効きは下がります。
燃費を取るか、暖かさを取るか。
その日の寒さと体調で選べばいいと思います。
このご相談へのお答えを読んだ別の方からは、こんなお声もいただきました。
冬に窓が曇るときは冷房をつけるのを知らなかったので、窓を開けて走ってました(笑)
今年の冬は暖かく過ごせそうです。
知っているだけで、ちょっと快適になる。
そういう知識を、これからもお届けできたら嬉しいです。
ハイブリッド車や電気自動車は、話が少し違います
ここまでは、エンジンで走る車のお話です。
日産のノートe-POWERやダイハツのロッキーハイブリッドのように、モーターで走るのが中心の車は、エンジンが止まっている時間が長くなります。
捨てる熱そのものが少ないので、暖房のためにエンジンを回す時間が増えます。
そのぶん電池も充電されるので、まるまる無駄というわけではありませんが、冬の燃費は下がります。
ほかのハイブリッド車も、季節によって燃費が上下しやすいのは同じです。
電気自動車は、捨てる熱がほとんどないので、暖房に電気そのものを使います。
冬に走れる距離が短くなる、大きな理由です。
電気自動車で冬の通勤がこなせるかは、リーフのご相談でお話ししています👇
冬に燃費が落ちる本当の理由は、暖房ではありません
「でも、冬のほうが燃費が悪い気がする」
そう感じている方は多いと思います。
冬のほうが燃費が悪いのは、事実です。
ただ、主な原因は暖房ではありません。
冷え切ったエンジンを、温めるためです。
外が0℃以下のような朝、エンジンオイルは硬くなり、各部品も冷え切っています。
この状態からエンジンを安定して動かし、排気ガスをきれいにするために、一時的に多めのガソリンを噴射する制御が入ります。
冷えているとガソリンが気化しにくく、うまく燃えてくれないので、その分を多めに送り込んで補っているイメージです。
人間も、夏の朝より冬の朝のほうが起きるのがつらいですよね。
うぉーっと気合が必要です、笑
車も同じで、寒い朝一番や、夜の仕事終わりの出発はつらいんです。
通勤が短いほど、燃費は悪く見えます
この「温めるためのガソリン」は、走り始めに集中して使われます。
ですから通勤距離が短いと、エンジンが温まりきる前に着いてしまいます。
全体に占める割合が大きくなるので、燃費が悪く出やすくなります。
逆に言えば、冬でも遠出のドライブのようにしっかり走る場面なら、暖房もエアコンも使って大丈夫です。
温まったあとは、そこまで気にしなくて済みます。
ちなみに、エンジンが完全に温まってしまえば、冬のほうが空気の密度が高く、多くの空気を取り込めるので、燃焼効率はむしろ良くなるとも言われます。
少しマニアックな余談でした。
「年数が経つと燃費が落ちる」という話も、よく耳にしますよね。
年数で燃費が落ちるのも、犯人は年式そのものではありません。
10年乗るとどうなるのかは、こちらでお話ししました👇
数字にすると、どれくらいか
状況で変わるので目安ですが、ご相談者さまにはこうお答えしました。
- 冷房:燃費の低下は、冬で5%ほど、真夏で15%ほど
- 暖房:ほぼ0%(※EV・e-POWERなどは除く)
- 冬の燃費悪化:主に冷えたエンジンを温めるぶん。短距離ほど影響が大きい
冷房の数字に幅があるのは、外が暑いほどコンプレッサーが頑張るからです。
冬にも5%と書いているのは、窓の曇り取りでA/Cを使う場面があるからですね。
※ この数字は、ご自宅の駐車場などで暖機運転をしない場合の目安です
※ エンジンをかけたまましばらく停めておく習慣がある方は、そのぶんが別に乗ります
※ 止まったままエンジンをかけておくと、エアコンを切っていても、軽自動車で1時間に200〜300ccほど、2,000ccほどの車なら軽自動車の3倍ほどのガソリンを使います(私が燃費計とにらめっこして確かめた目安です)
ここからが、本題です
ご相談者さまは、こう書かれていました。
自分は省エネで自己満するために、一人で運転する時は暖房も冷房も使わないですが、年々体の代謝が悪くなりしんどくなってきました。
私も、どうやったら燃費よく、無駄なく走れるかを追求していた時期があります。
こういう話が長くなってしまうのは、その名残です、笑
そのうえで、いまの私はこう考えています。
夏にエアコンを使わずに汗をかくと、疲れがたまります。
喉が渇いて、飲み物を余計に買います。
体調を崩せば、そこにお金がかかります。
仕事のパフォーマンスも落ちます。
ガソリン代を数パーセント削るために、そちらを差し出しているのだとしたら。
それは、損をしていることになるのではないでしょうか。
窓を開けて走れば、と思われるかもしれません。
ただ、高速道路で窓を開けて時速90kmほどで走ると、エアコンを使って窓を閉めて走るより、かえって燃費が悪くなることがあります。
窓を開けると、車のまわりの空気の流れが乱れて、抵抗が増えるからです。
私はタフではないので、あまり我慢しないようにしています。
あと、汗をかいても洋服は洗えますが、シートは洗えませんからね。
冬の暖房は、そもそも捨てるはずだったエネルギーです。
むしろ喜んで使っています。
寒い思いをして運転する理由は、ありません。
とはいえ、車のエコを突き詰める姿勢も、私は好きなんです。
燃費を気にすること自体を、やめてくださいと言いたいわけではありません。
体も資本だよね、ということなんです。
それに、冬場は窓が曇りやすいです。
私は、曇ったらデフロスター(窓に風を当てる設定)にして、エアコンも入れます。
冬に窓が曇ったまま走るのは、とくに危ないですから。
安全のための快適さは、削るところではないと思っています。
ただ、「明らかにおかしい」なら別の話です
ここまで「冷房を入れると加速が鈍る」のは仕組みの話だとお伝えしてきました。
でも、ひとつだけ添えておきたいことがあります。
このご相談には、整備士の方も答えてくださいました。
その方が最初にされたのは、説明ではなく質問でした。
車両の加速、燃費不良とのことですが、いくつかご質問させてください。
メーター内に警告灯などはありますか。
加速が悪くなったとありますが、具体的にはどのような加速不良でしょうか。
車種、年式によって車の制御も変わってきますので、私で分かる範囲でお答えさせていただこうと思います。
※ 整備士をされている方が、このご相談に寄せてくださった言葉です。
つまり、「エアコンのせい」で片づける前に、そもそも不具合ではないかを確かめているわけです。
ご相談者さまのお返事によると、とくに加速が悪いのは、奥さまが乗っているジャスティ(スバル・2017年式・2WD)でした。
坂道や高速道路でなかなか加速せず、いつもを10とすると7くらいだそうです。
警告灯は点いていないものの、エンジンが温まっても、良くなった気はしないとのことでした。
ご自身のCX-5(マツダ・2012年式・4WD)は、もともとパワーがあるからか苦にはならないものの、加速は少し落ちるそうです。
すると、整備士さんからは、こんなお答えが返ってきました。
警告灯やコンピューター診断に問題がなければ、電気的には問題がない可能性がかなり高いです。
お車は、エンジンが暖まるまで、エンジンの回転数を意図的に上げています。
なので、暖機の前と後では、走行性能に差が出ると言えます。
さらに、CVT(変速機)の油温が低すぎると、なるべく低いギア側で走らせるように、わざと制御をかけている場合があります。
実際に、極寒の地域ではこのようなケースがよくあると教えられました。
ただ、この制御は車のメーカーによって変わってくるので、一概には言えません。
一度詳しくコンピューター診断をして、実際にお車を診てみないと分からない、というのが結論です。
※ 同じ整備士さんが、ご相談者さまのお返事を受けて寄せてくださった言葉です。
冬の燃費のところでお話しした「冷えたエンジンを温める」制御は、燃費だけでなく、走りにも出るんですね。
真冬はマイナス10℃を下回る地域だそうで、整備士さんへのお返事には「むしろこんな寒いのに頑張って走ってくれて、ありがとうですよね」とありました。
たしかに、エアコンを入れれば加速は鈍くなります。
寒い朝も、エンジンが温まるまでは鈍くなることがあります。
でも、去年までと明らかに違う、警告灯が点いている、アイドリングが不安定——そういう場合は、別の原因が隠れていることがあります。
ひとつの目安は、「エアコンを切って、エンジンが温まったあとでも症状が出るか」です。
それでも変わらないなら、エアコンや寒さの話ではありません。
一度お店で、コンピューター診断(専用の機械で、車のコンピューターの記録を読み取る点検)も含めて、見てもらってはいかがでしょうか。
何もなければ、それで安心が買えます。
まとめ
- 暖房は「どうせ捨てる熱」を使うので、燃費はほぼ落ちない(※EV・e-POWERなどは除く)
- 冷房はコンプレッサーを動かすので落ちる。目安は冬で5%、真夏で15%ほど
- 冬に燃費が落ちる主な理由は暖房ではなく、冷えたエンジンを温めるぶん
- 通勤が短いほど、その割合が大きくなって燃費は悪く見える
- 曇り取りだけなら、外気導入+暖房という手もある
- 寒い朝に加速が鈍いのは、冷えているあいだの制御のこともある
- エアコンを切って、エンジンが温まったあとでも症状が出るなら、不具合かもしれない
仕組みが分かると、我慢する場所が変わります。
「暖房を我慢しなきゃ」と思う必要はありませんし、夏も「今日は暑いから、燃費より体を優先しよう」と決められるようになります。
燃費を気にするのは、いいことです。
ただ、削ってはいけないところまで削らないように。
そこだけ、お伝えできていれば嬉しいです。
ご相談者さまの、その後
このご相談には、翌朝、うれしいお返事をいただきました。
原付分のパワーと考えると、そりゃパワー不足になるわーと唸ってしまいました(笑)
でも確かに自分の体調を考えるのも大切ですよね。
最近は猛暑も多いし、ちょっっっっとだけ冷房つけますね(笑)ケチだなー自分。
もちろん子供が乗っているときは、汗をかかないように冷房フル稼働してますよ。
「ちょっっっっとだけ」の「っ」の数に、葛藤がにじんでいます、笑
そして、お子さんが乗っているときはフル稼働。
ご自分のときは我慢しても、お子さんには我慢をさせない。
同じお返事の中には、こんな一文もありました。
自分は通勤距離が片道5キロで、燃費が悪く見えがちな点は考えを改めないといけないですね。
なんか悔しいな(笑)
この記事で「短距離ほど燃費は悪く見える」とお伝えしましたが、まさにこの方の通勤のことでした。
メーターの数字が悪いのは、運転が下手だからでも、車が悪いからでもありません。
通勤が短いから、です。
ほかにも、ご本人いわく「武勇伝」が書かれていました。
以前乗っていた車で、「満タン55リットルのタンクに、53.8リットル給油した」ことがあるそうです。
月に1度の特売日(1リットル10円引き)に合わせて走り方を調整し、ギリギリアウトではないかと心配しながらスタンドにたどり着いて、ひとりでガッツポーズをされたそうです。
いまは「貧乏ランプ」(燃料の残りが少ないことを知らせるランプ)が点いてから給油している、とも書かれていました。
そして最後は、「安全安心、体に優しい環境も意識していきますね」と締めくくってくださいました。
私からは、「燃費の追求、おもしろいです!」とお返事しました。
「貧乏ランプ」は初めて聞く言葉でしたが、じつは私の車も、前の日に点いたばかりでした、笑
燃費を気にするというのは、こういう楽しさでもあるんですよね。
だから私は、我慢をやめてくださいとは言いません。
体に無理が出てきたら、そこだけは緩めてほしい、ということなんです。
燃費と空調で疑問や不安がある場合は、このページ下の「コメント欄」からお気軽にどうぞ(ニックネームもメールアドレスも要りません)。
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