著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

「年に数回、家族みんなで出かけることがあって」

「だから、大きい車にしておいた方がいいでしょうか」

車選びのご相談で、本当によくいただく質問です。

その気持ち、とてもよく分かります。

いざというときに、全員が乗れない車では困りますから。

でも実は、この「年に数回」という言葉の中に、車選びで損しないための大きなヒントが隠れています。

この記事では、その「年に数回」を、やさしく翻訳していきます🐧

✅ 結論からお伝えします

車の大きさは「いちばん人と荷物が多い日」ではなく「いちばん長い、いつもの日常」で選ぶのがおすすめです。

年に数回の大人数・大荷物は「その日だけ借りる」という選択肢で埋められます。

もちろん、大きい車を選ぶのが正解の方もいます。

この記事は、その見分け方の話です。

私たちは「いちばん多い日」で車を選んでしまう

「大は小を兼ねる」

という言葉があります。

でも車では、これがそのまま当てはまりません。

大きさは、そのまま維持費と日々の気づかいになって、返ってくるからです。

それなのに、なぜ私たちは大きい方を選びたくなるのでしょうか。

車を選ぶとき、私たちは無意識に「いちばん人と荷物が多い日」を基準にしています。

お盆の帰省。

家族旅行。

親戚が集まる日。

年に数回のその日に、全員が快適に乗れる車を選びたくなる。

これは、とても自然な考え方です。

そしてこれは、売る側にいた私自身の実感でもあります。

営業マンの仕事は、その車で「できること」をポジティブにお伝えして、車に興味を持ってもらうことです。

もちろん「予算の範囲内で、程度のいい車が欲しい」というご相談であれば、小さな車をご提案することもあります。

でも、ファミリー層のお客様が相手なら——。

やっぱり「車を買ってよかった」に直結する、広さ、便利機能、快適機能をご提案してしまうんですね。

悪気はまったくありません。

ただ、店頭では「いちばん大きな日」の話が、自然と主役になるということです。

だからこそ「いつもの日常」の視点だけは、自分で持って行く必要があるんです。

それでは、ちょっとだけ立ち止まってみてください。

残りの360日ほどは、どんな乗り方をしていますか。

通勤で一人。

買い物で二人。

送り迎えの帰り道、後ろの席はほとんど空っぽ。特に3列目はしまいっぱなし…

その日常のほうが、圧倒的に長いはずなんです。

つまり多くの方が、「年に数回の日」のために、一年中その車の維持費を払っていることになります。

しかも大きい車が引き受けるのは、お金だけではありません。

狭い道でのすれ違い。

駐車場での切り返し。

立体駐車場の高さ制限。

こうした小さな気づかいを引き受けているのも、年に数回の日ではなく、いつもの360日のほうなんです。

とはいえ、「小さくして後悔しないかな」という心配も、あると思います。

ここでひとつ、現場で感じてきた実感を。

車は「無い生活」と比べれば、「ある」時点で、ものすごく便利です。

小さい車と中くらいの車の差は、車の有り無しの大きな便利さの違いと比較すると、わりと小さな差なんです。

だから「一段小さくしたら生活が回らなくなる」ということは、思っているより起きません。

じつは私も、車を「日常」で選び直しました

じつは私自身、5年間、スライドドア付きで軽自動車の中では広いタントに乗っていました。

そして次の車に選んだのは、スライドドアのないN-WGNでした。

スライドドアは、たしかに便利でした。

でも、軽自動車はもともと幅が細いんです。

だから駐車場でドアを開けても、お隣との間には比較的余裕がありました。

そしてもうひとつ。

子どもが自分でできることが増えて、ドアのサポートだけしてあげれば、自分で乗り降りできるようになったこと。

これが大きかったんです。

便利な装備をひとつ手放す選択でしたが、私たちの「いつもの日常」には、それで十分でした。

装備や大きさは「あって困らないもの」ではなく、「毎日の維持費と気づかいで、少しずつ払い続けるもの」なんだと、自分の車で実感しています。

数字にすると、見えてきます

車の大きさはどっちの日で選ぶ?年に数回の大きい日といつもの360日の比較図解

ここで、ざっくりとした比べ方をひとつ。

車が大きくなると、いろいろな費用が「少しずつ」上がります。

自動車税は、排気量が上がるほど高くなります。

重量税は、車が重くなるほど高くなります。

燃料代は、車体が大きく重いほどかさみます。

タイヤは、サイズが大きくなるほど1本あたりの値段が上がります(しかも4本セットです)。

車検も、部品が大きく高くなるぶん、じわっと上がります。

ひとつひとつは小さな差です。

でも合計すると、その差は年に数万円ほどになることも珍しくありません。

(車種や乗り方でまったく変わるので、幅のある話としてお読みください。

そしてもうひとつ、金額の表に出てこないコストもあります。

大きい車は、給油のたびに減っていくガソリンメーターへの小さなストレスや、「ぶつけたらどうしよう」という気づかいも、少しずつ心に載せてきます。

お金と心の両方で、「年に数回の日」の分を、毎日払い続けている——。

そう考えると、車の大きさは、それ自体がひとつの「固定費」なんです。

一方で、大きめの車を借りると、1日あたり数千円からが目安です。

(こちらも会社や車種で変わります)

年に3日か4日、その用途のためだけに借りるとしたら——。

差額の維持費と、それほど変わらないか、場合によっては借りたほうが安いこともあります。

大事なのは、勝ち負けを決めることではありません。

「持つ」「借りる」かを一度天秤にかけるだけで、選択肢がひとつ増えます。

そして選択肢が増えると、車選びは、ぐっとラクになります。

数百万円の乗り換えが、数千円で解決するかもしれなかった話

実際のご相談で、こんなことがありました。

お子さんが3人になるので、コンパクトミニバンから、もうひとまわり大きいミニバンへの乗り換えを考えている、というご相談です。

お話を整理していくと、見えてきたことが2つありました。

ひとつ目。

チャイルドシートやジュニアシートは、意外と「横幅」を使います。

そして実は、車をワンサイズ大きくしても、横幅は言うほど変わりません。

(広くなるのは、主に3列目や車内の移動のしやすさです。

だから、大きくしたのに「思ったほど広く感じない」というオチが待っていることもあるんです。

ふたつ目。

シートまわりには、数千円で買える補助アイテムがあります。

それで席にゆとりが生まれれば、いまの車のままで日常は回ります。

そして年に数回の遠出だけ、大きい車を借りる。

数百万円の乗り換えを考えていたご相談が、「まずは数千円で試してみます」という着地になりました。

もちろん、すべてのご家庭でこうなるわけではありません。

でも、「買い替える前に、いまの車のままで解決できないか」を一度試してみる価値は、十分にあると思うんです。

もし乗り換えの検討を続ける場合も、候補の車には、いま使っているチャイルドシートを実際に載せてみるのがおすすめです。

カタログの室内寸法より、ずっと確かな答えが出ます。

同じ予算なら、小さい車は「程度」が買える

もうひとつ、サイズを見直すことには、大きなおまけが付いてきます。

中古車選びで本当に大事なのは、実は大きさよりも「程度」です。

年式が新しめであること。

走行距離が少なめであること。

整備の履歴が残っていること。

この3つがそろった車は、そのあとのカーライフで、トラブルも出費も少なくなりやすいんです。

そして同じ予算で比べたとき——。

小さい車のほうが、この3つの条件を満たす1台に、ずっと出会いやすくなります。

大きい車で予算いっぱいの「くたびれた1台」を選ぶか。

ひとまわり小さい車で「程度のいい1台」を選ぶか。

「いつもの日常」で足りるサイズを知っていると、この選択で迷わなくなります。

「借りる」の不安を、ほどいておきます

「でもレンタカーって、なんだか不安で」

そう思われる方も、多いと思います。

とくに「格安」と名のつくレンタカーは、安すぎて逆に心配になりますよね。

種明かしをすると、格安レンタカーが安い理由は、中古車を使っているからです。

保険が薄いわけでも、あとから何かを請求されるわけでもありません。

最新の装備ではありませんが、年に数日の「足」としては十分です。

しかも、借りた車が途中で壊れても、基本的にはレンタカー会社が対応してくれます。

自分の財布は痛みません(パンクのタイヤ代など、一部は自己負担になる場合があります。

借りるときに確認しておくと安心です)。

格安レンタカーの具体的な会社や使い方は、こちらの記事にまとめています。

【えっ!?格安レンタカー?】車持ちでも無しでも頼れるレンタカー会社急な故障や一時的な車の必要に、大手より安い格安レンタカーが頼れます。ガッツ・業務レンタカーが安い理由と賢い使い方を、元ディーラー営業×元1級整備士が紹介します。...

もうひとつ、身近な選択肢も。

ご家族や親御さんの車を、その日だけ借りるという手もあります(その場合は、その車の保険の「運転者の範囲」だけ確認しておいてくださいね)。

「持っていないと困る」から「借りられるなら大丈夫」へ。

考え方がひとつ変わるだけで、車選びの景色は、ずいぶん変わります。

実はこれ、「いまの車に長く乗りたい人」の味方でもあります

ここまで「大きい車を買う前に」という話をしてきました。

でも実はこの「いざとなれば借りられる」という知識には、もうひとつの効き方があります。

ご相談を受けていると、「車が壊れたとき、代わりの足がないと困るから」という理由で、まだ十分乗れる車を早めに手放してしまう方が、けっこういらっしゃるんです。

お気持ちは、よく分かります。

通勤や送り迎えに車が欠かせない生活で、「もし明日動かなくなったら」と考えると、不安になりますよね。

でも、いざとなれば借りられる。

それを知っているだけで、この不安はずいぶん軽くなります。

壊れてから、レンタカーでつなぎながら、じっくり次の車を探す。

格安レンタカーなら1日数千円、1ヶ月続けて借りても月3〜5万円ほどが目安です。

次の1台をじっくり探す1〜2ヶ月のつなぎとしては、十分現実的な金額だと思いませんか。

それができると分かっていれば、焦って手放す必要も、焦って買う必要もなくなります。

焦って買った車は、だいたい高くつきます。

じっくり選んだ車は、長く付き合えます。

1台の車に長く大切に乗ることは、車で損しないための、いちばん確実な方法です。

「借りられる」という知識は、その長いカーライフを、後ろからそっと支えてくれます。

【年間いくら!?】車の維持費も知れば安心!高いか判断するための3パターンを解説車の維持費は年間いくら?高いか判断するための3パターンを、元ディーラー営業×元1級整備士が具体額の目安とともに整理。費用を知れば不安なく車選びができます。...

それでも、大きい車が正解の人

最後に、大事な両論を。

ここまで書いておいてなんですが、大きい車を持つのが正解の方も、たくさんいらっしゃいます。

突発的な遠出が多い方。

介護や送り迎えで、乗り降りのしやすさが毎日の生活に効く方。

そして——その車が、単純に好きな方。

好きで選んだ車は、それだけで持つ理由になります。

「好き」かどうか迷ったら、こう自分に聞いてみてください。

「誰も見ていなくても、この車に乗りたいか?」

誰かの目のためではなく、自分の心が動くなら、それは立派な、持つ理由です。

借りるほうがいい、と押し付けるつもりは、まったくありません。

お伝えしたいのは、ひとつだけ。

「いちばん多く人や荷物を乗せる日」ではなく、「いちばん長い、いつもの日常」で車を選ぶ、という視点があること。

その視点で一度考えたうえで大きい車を選んだなら、それは迷いのない、いい選択です。

まとめ:車の大きさは「いつもの日常」が教えてくれる

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 車の大きさは「いちばん多い日」ではなく「いちばん長い、いつもの日常」で選ぶ
  • 大きさの維持費差は年に数万円ほどになることも。大きめの車を借りるのは1日数千円から
  • 買い替える前に「いまの車のままで解決できないか」をまず試す(チャイルドシートは実車に載せて確認)
  • 「いざとなれば借りられる」は、いまの車に長く乗りたい人の不安も軽くしてくれる
  • 突発の遠出が多い方・介護や送迎の方・その車が好きな方は、大きい車が正解
ピゴス

白状すると、私自身はまだ、この「借りてやりくりする」を完全には実践できていません。

分かっていても、車を持っている安心感を、なかなか手放せないんですよね(笑)

だから、これはえらそうな助言ではなく、私も一緒に考えている途中の話です。

車の選び方全体は、こちらの記事で7つの優先順位に沿って解説しています。

【初めて診断!】あなたにぴったりな車の選び方を7つの優先順位で解説自分にぴったりな車の選び方を、7つの優先順位で元1級整備士×元ディーラー営業が解説。初心者でも失敗しない車選びの考え方と診断のステップを業界目線で紹介します。...

車の予算の決め方は、こちらをどうぞ。

【まずはマネするだけ!】「スプシ付き」車購入の失敗しない予算の決め方を解説車の予算、何となくで決めていませんか?購入費+維持費を見える化するスプレッドシート付きで、失敗しない予算の決め方を、元ディーラー営業×元1級整備士が紹介します。...

車のサイズ選びで疑問や不安ある場合は、「X」「お問い合わせ」「コメント欄」などでお気軽にご相談ください。

最新記事のアップもXでお伝えしておりますので、よろしければフォローよろしくお願いいたします

ABOUT ME
ピゴス
ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、コメント欄や「X」などでいつでもメッセージを承っております。お気軽にどうぞ!