著者:ピゴス - 元1級整備士×元ディーラー営業マン(整備12,000台/販売500台/年300件相談対応)

中古車のお店を3つまわって、見積もりを2枚持って帰ってきた。

ここまで来たら、あとは決めるだけ——のはずなのに、その最後の一歩が、なかなか動きません。

どちらも良さそうに見えるし、どちらにも気になるところがある。

そして何より、その見積もりの中身が妥当なのかどうかを、自分では判断できない。

中古車を買うときに、ここでいったん止まってしまう方は、本当に多いです。

ピゴス
ピゴス

3つのお店をまわって、2台まで絞れているなら、いちばん大変なところは、もう越えていますよ

あとは、決め手をひとつだけ決めれば大丈夫です

✅ 結論からお伝えします

経済性で選ぶなら、私は「整備の記録が残っているほう」を選びます。

同じくらいの年式・同じ予算なら、走った距離の差より、その車がこれまでどう扱われてきたかのほうが、この先の出費に効いてくるからです。

そして見積もりは、車両価格ではなく「支払総額の欄」で見比べてください。

車検の残りで、そこが変わってきます。

ただし、スライドドアが要る日があるなら、その価値も本物です。

そこは、いまお持ちの車で足りるかどうかで決めていただければと思います。

いただいたご相談

まずは、いただいたご相談の内容です(内容を編集して掲載しています)。

夫婦で1台の車を共有していましたが、2台必要だと感じるようになりました。

妻の日常使い(買い物や送り迎え)で使う車で、旅行などには使いません。

子どもが5歳で、スライドドアのある車も検討したいと思っています(あれば嬉しいですが、いま持っているタントエグゼでも不満は少ないです)。

中古車のお店を3店舗まわってきました。

接客が親切で、見積もりの内容に保険などの上乗せがなかったお店で、気になる2台がありましたので、どちらにするか検討中です。

①アルトラパン ショコラ/初年度登録 2014年8月/グレード G/走行距離 43,000km/2年ごとの整備記録がきちんと保存してある

②N-BOX/初年度登録 2014年12月/グレード G Lパッケージ/走行距離 74,000km/整備記録なし

予算は80万円、買う場所は中古車専門店、手放す車はありません。

メンテナンスパックや延長保証には加入せず、オプションも現状のままで購入する予定です。

車の知識が無く、お見積りが問題ないのかが気になっています。

とにかく乗れれば問題ない、出来れば乗り潰すまで乗りたいと思っています。

ここでまず、お伝えしておきたいことがあります。

「見積もりの内容に、保険などの上乗せがなかった」——ここに気づけている時点で、この方はもう、お店をきちんと見る目をお持ちです。

中古車選びで難しいのは、じつは車そのものより、どのお店の話を信じるかのほうだったりします。

その関門を、この方はすでに越えています。

なぜ、走った距離の差では決まらないのか

先に、はっきりしている差からお伝えします。

毎月の出費という意味では、1台目のほうが有利です。

車体が軽いぶん、燃費が良く、タイヤの減りもゆるやかになります。

同じ軽自動車どうしでも、車重の差は毎日じわじわ効いてきます。

では、もう一方の走行距離の差はどうでしょうか。

候補の2台は、走行距離が43,000kmと74,000km。

数字だけ見ると、3万kmの差はずいぶん大きく感じます。

でも、私はここでは決めません。

年に4,300kmと、年に7,400km

どちらも初年度登録は2014年で、相談をいただいた時点で、登録からおよそ10年がたっていました。

その10年で割ってみると、1台目は年に約4,300km、2台目は年に約7,400kmです。

私が中古車を見るときの目安は、「年に8,000kmくらいまで」

この物差しを当てると、じつは2台とも目安の内側に入っています。

つまり、この2台は距離では優劣がつきません。

もちろん、これはあくまで目安のひとつです。

土日しか乗らない方なら3万km台でも十分ですし、毎日長い距離を走る方なら、また見え方は変わります。

整備の記録は、前の持ち主からの手紙です

では何で決めるのかというと、私は「整備の記録」で決めます。

整備記録簿というと、点検した日付と作業が並んでいるだけの、事務的な紙に見えるかもしれません。

でも私には、あれは前に乗っていた方からの手紙のように見えるんです。

2年ごとにきちんと記録が残っているということは、その方が2年ごとに、この車をプロに預けてきたということです。

お金と時間を使って、面倒な手続きをして、その車を守ってきた人がいた。

中古車って、ただの安い車ではなくて、誰かのカーライフの続きなんですよね。

ピゴス
ピゴス

中古車を見ていると、この車は大切に乗ってこられたのかな、と感じる瞬間があります

整備の記録がきちんと残っていたり、年式のわりに内装が妙にきれいだったり

あくまで私の感覚ですが、そういう車は、買ったあともあまり裏切りません

乗り潰すまで乗るつもりなら、なおさら効いてきます

今回の方は、「出来れば乗り潰すまで乗りたい」と書かれていました。

この一文が、私の判断をはっきりさせてくれました。

車にかかるお金は、大きく2つに分けられます。

ひとつは、買うときと売るときにかかる手数料。

もうひとつは、点検・車検・修理の費用です。

このうち、1台を長く乗ることで大きく節約できるのが、買う・売るのたびにかかる手数料のほうなんです。

逆に言えば、安い車を選んで壊れるたびに乗り換えていると、その手数料を何度も払うことになります。

だから「乗り潰すまで乗る」と決めている方ほど、最初の1台の状態が効いてきます。

すでに登録から10年以上たった軽自動車ですから、これから部品の交換が少しずつ増えてくる時期でもあります。

その時期を、記録のある車で迎えるのか、分からない車で迎えるのか。

私はここに、3万kmの差より大きな違いがあると思っています。

もうひとつ、先回りしてお伝えしておきます。

候補の2台はどちらも2014年の登録なので、あと数年で13年を迎えます。

13年を超えると、税金が上がります。

2015年3月以前に登録された軽自動車の場合、自動車税が年7,200円から12,900円へ。

重量税も、車検のときに納める2年分が6,600円から8,200円になります。

ならしてみると、年に6,000円台の増加です。

数字を見ると身構えてしまいますが、これを理由に慌てて乗り換える必要はない、というのが私の考えです。

乗り換えには、車両価格とは別に、まとまった諸費用がかかります。

その金額と並べたとき、年に6,000円台は、決め手にするには小さすぎるんです。

とはいえ、13年です。

乗り換えを「そろそろ考え始める時期」に入っているのは、そのとおりだと思います。

見積もりが妥当かどうかは、車検の残りに出ます

「お見積りが問題ないのか気になっています」——これが、今回いただいた質問でした。

見積もりの読み方はいろいろありますが、この2台に関して、まず見ていただきたいのは「車検の残り」です。

1台目は、車検が丸2年残っています。

つまり、買ったあとしばらくは、車検の費用が出ていきません。

2台目は、これから車検を取る形になります。

この場合、見積もりには車検の費用や税金がのってきます。

ですから、車両価格が同じくらいに見えても、支払総額は変わってくるはずなんです。

見積もりを2枚並べるときは、上のほうに書いてある車両価格ではなく、合計欄の支払総額で見比べてみてください。

そして、意味の分からない項目があったら、その場で聞いていただいて大丈夫です。

中古車の見積もりは項目が多くて、正直なところ、お店で説明を受けても一度では飲み込みにくいことがあります。

聞かれて嫌がるお店なら、そのときは考え直せばいい。

今回のように、上乗せのない見積もりを出してくれるお店なら、きっと丁寧に教えてくれるはずです。

スライドドアは、いま本当に必要ですか

ここからは、数字では決められない話です。

小さいお子さんがいるご家庭には、本当に助かる装備です

先に、私の正直な気持ちをお伝えしておきます。

スライドドアは、私も大好きな装備です。

両手が荷物と子どもでふさがっていても、ボタンひとつで開いてくれる。

狭い駐車場で、隣の車にドアをぶつける心配もありません。

子育て中のご家庭にとって、あれは本当に頼れる装備だと思います。

子育ての不安をお金で解決できるなら、それはそれで健全な考え方だとも思っています。

ですから、「スライドドアはいらない」という話をしたいわけではありません。

白状すると、私も同じところで迷いました

じつは私自身、少し前に、スライドドアのある軽から、スライドドアのない軽に乗り換えました。

主に妻が使う車で、子どもの送り迎えにも使います。

決めるときは、内心かなりドキドキしていました。

普段の送り迎え、大丈夫かな。

文句が出ないかな、と。

おかしな話です。

私は仕事でずっと、「普通のドアの軽でも、意外となんとかなりますよ」とお伝えしてきた立場ですから。

人にすすめるのと、自分でやってみるのは、やっぱり違いますね。

結果を言うと、心配は杞憂でした。

最初こそサイズ感を嫌がっていた妻も、いまではすっかり気に入ってくれています。

送り迎えで実際に困ることはありませんでしたし、車が小さくなったぶん、狭い道もお店の駐車場も、気持ちがひとつ軽くなったそうです。

もちろん、これはあくまで我が家の場合の話です。

2台あるなら、要る日はいまの車を使えばいい

そして今回は、もうひとつ大きな条件があります。

この方は、いまお持ちのタントエグゼを手放しません。

つまり、ご家庭にスライドドアの車が1台残るということです。

ということは、乗り降りにスライドドアがほしい日は、そちらを使えばいいわけです。

しかも新しく買う車は、買い物と送り迎えが中心で、旅行には使わないとのこと。

長い距離を移動して、荷物を積んで、何度も乗り降りする——という場面が、そもそも少ないんです。

スライドドアや3列目のような装備は、めったに使わない日のために買うのではなく、その日は別の手で工夫できないかを先に考える。

2台持ちは、その工夫がやりやすい形です。

それに、お子さんは5歳。

自分でドアを開けて、自分で乗り込めるようになってくる頃です。

あんなに「絶対に必要」だと思っていた装備が、いつの間にか、必ずしも要らなくなっていく。

車に求めるものは、家族の形と一緒に、少しずつ変わっていくものだと思います。

車のサイズや装備を暮らしに合わせて決める考え方は、こちらにまとめています。

車のサイズ選びで後悔しないコツ|「年に数回の大きい日」より「いつもの360日」で決める「年に数回の大人数」で大きい車を選ぶ前に。車の大きさは「いちばん長いいつもの日常」で決めると後悔しません。維持費の差と借りる選択肢、大きい車が正解な人の見分け方まで、ご相談の実例で解説します。...

10年以上たった軽では、ドアの形が少し効いてきます

ここは、整備の目線から見た話です。

登録から10年以上たってくると、電気で動く部品に不具合が出はじめることがあります。

スライドドアは、モーターをはじめ、動くための部品の点数が多くなります。

部品が多いということは、経年で交換が必要になる箇所も、そのぶん増えるということです。

その点、ヒンジドア——つまり普通に手で開ける形のドアは、開け閉めそのものでの不具合が、ほとんどありません。

これは新しい車では、まず気にしなくていい差です。

ただ、10年以上たった車を、これからさらに長く乗ろうという今回の場面では、少しだけ差が出てくるところだと思います。

もしお持ちの車でスライドドアが動かなくなったときの直し方は、こちらで解説しています。

【えっ?急に?】スライドドアのワイヤー切れ修理費用は?自分で直せるか整備士が解説電動スライドドアのワイヤー切れは自分で直せる? まず確認したいことから、修理はどこに頼むか、古い車なら『手動で乗り切る』という選択まで。買い替えを急がなくていい理由も、元整備士が正直にお話しします。...

記録がないほうを選ぶなら、現車で埋めます

ここまで読んで、「それでもN-BOXがいい」と思われた方もいらっしゃると思います。

それも、まったく問題ありません。

まず誤解のないようにお伝えしておくと、整備記録がないのは、お店が隠しているからではありません。

記録簿は前に乗っていた方の持ち物ですから、渡されないまま流通することは、ふつうにあります。

ですから、記録がないこと自体を、お店の落ち度のように受け取らないでいただきたいんです。

そのうえで、記録という手がかりがないぶんは、現車を自分の目で見て埋めます

私が現車を見に行ったときに、いちばん時間をかけるのは、じつは内装です。

年式や走行距離の数字より、乗るたびに目に入る場所がきれいかどうかのほうが、毎日の気分に効きます。

外装の小さな傷は、乗ってしまえば見えません。

でも内装は、運転しているあいだじゅう、ずっと目に入る場所です。

それに——あくまで私の感覚ですが、内装がきれいな中古車は、前に乗っていた方が丁寧に使っていたことが多い気がしています。

シートやハンドルには、その車の過ごしてきた時間が表れますから。

匂いや内装は、写真には写りません。

買ったあとで直しにくい所ほど、そうなんです。

だからこそ、最後は自分の目で会いに行く。

N-BOXを見に行く前に、どこを確認しておけばいいかは、こちらにまとめました。

【ポイント!】中古N-BOXを見に行く前に確認!現車チェックの注意点を解説予算オーバーで気に入った中古N-BOX、買うべき?元1級整備士×元ディーラー営業が、現車チェックの3つのポイント(タイヤ・飛び石・総額)と、予算との上手な折り合いのつけ方を損しない視点で解説します。...

整備記録がない1台を買っていいものか、もっとじっくり考えたい方は、こちらもどうぞ。

【整備記録】7年なしの中古車、買って大丈夫?法定12ヶ月点検なし納車の見極め方整備記録が7年ない中古車、買って大丈夫?法定12ヶ月点検なしで納車される車のリスクと、納車後にディーラーで点検する賢い備え方を、元1級整備士×元ディーラー営業が解説します。...

まとめ

同じくらいの予算で、中古車が2台まで絞れたときの見方を整理します。

  • 走った距離の差は、年あたりに割り直してみる(目安は年に8,000kmくらいまで)
  • 同じくらいの年式なら、整備の記録が残っているほうが、この先の出費で有利になりやすい
  • 見積もりは車両価格ではなく支払総額の欄で見比べる(車検の残りで総額は変わります)
  • 長く乗るつもりの方ほど、最初の1台の状態が効いてくる
  • スライドドアは、要る日があるかどうかで決める(2台あるなら、その日は今の車を使う手もある)
  • 記録がない1台を選ぶなら、その分は現車を見て埋める(とくに内装と匂い)

どちらを選んでも、間違いということはありません。

ただ、「乗り潰すまで乗りたい」という言葉を大切にするなら、私は記録が残っているほうに一票を入れます。

今回の2台でいえば、アルトラパン ショコラのほうです。

ご相談者さまの、その後

このご相談には、続きがありました。

お返事をお送りしたあと、「認定中古車も見てみようか、という話にもなっている」と教えてくださったんです。

これは、とても良い方向だと思いました。

ディーラーの認定中古車は、過去の整備の履歴がはっきりしていて、年式にもよりますが1年以上の保証が付くことが多い。

つまり、今回の判断で気にかかっていた「これまでどう扱われてきたか」が、最初から分かっている状態で買えます。

もちろん、そのぶん車両価格は少し上がります。

でも、長く乗るつもりなら、最初に少し払っておいたほうが、結果としては損をしにくいことが多いです。

そしてもうひとつ、この方にお伝えしたことがあります。

それは、「車とお店は、セットで見る」ということです。

長いお付き合いになると、車の出来と同じくらい、店舗や担当者の誠意や応対が効いてきます。

ご自分で整備までできる方は別として、多くの方は、これから何度もお店に車を診てもらうことになりますから。

この方はもう、3店舗まわって「このお店は上乗せがなかった」と見抜いています。

その目で選んだお店なら、車のほうも、きっと良い出会いになると思います。

認定中古車がなぜ失敗しにくいのか、その理由はこちらにまとめています。

【慌てて決めちゃダメっ!】中古車を買うならまずはここから探そう!中古車選びはまずディーラーの認定中古車から。品質・保証・適正価格など、慌てて決める前に知っておきたい5つの理由を、元ディーラー営業×元1級整備士が解説します。...

中古車選びで疑問や不安ある場合は、「X」「お問い合わせ」「コメント欄」などでお気軽にご相談ください。

最新記事のアップもXでお伝えしておりますので、よろしければフォローよろしくお願いいたします

関連記事

中古車と新車で、同じくらいの予算になったときの考え方はこちらです。

【実は割高?】84万円のミライース vs 128万円の新車。「価格差」で見る損しない選択走行2,800kmで84万円の中古ミライースと、128万円の新車、どっちが損しない? 元ディーラー営業が年間コスト・修理リスク・安全装備で比べました。ご相談者さまが最後に新車を選んだ、意外な決め手もお伝えします。...

そもそもどんな中古車があるのかを、ジャンル別に見てみたい方はこちらもどうぞ。

【結局どれ?】ジャンル別に12連発!知るだけで損しにくいオススメの中古車を紹介!中古車選びで迷ったら。お金が減りにくい7ジャンルと、人気のスライドドア車5ジャンルを、元ディーラー営業×元1級整備士がメリット・デメリット付きで紹介します。...

車のことをゼロから順に整理したい方は、まとめのページもあります。

【はじめに】損しないカーライフの歩き方|6つの章でわかる車の教科書車の維持費・選び方・買い方・保険・売却までを6つの章で整理した入門まとめ。元1級整備士×元ディーラー営業のピゴスが、20以上の記事で損しないカーライフへの歩き方を案内します。困った時に戻れる入口ページです。...
ABOUT ME
ピゴス
ギリギリ昭和生まれ、2児のパパとして奮闘中…空いた時間に車の情報発信や質問に答えている管理人のピゴスです! クルマ好き歴30年以上、気付けば1級自動車整備士(笑)元、国産自動車のディーラーの営業マンです。 過去に車を整備したり販売させていただいたりする中で、車を移動手段と考えている方にこそ、様々なお悩みがあることに気付きました。そう言った悩みのある方が、知らないがゆえに損してしまうことがないようにこのブログを立ち上げました。少しでもみなさまのお悩みに寄り添った内容を発信できればと考えております。 取り上げて欲しい題材、個別のお悩みなど、コメント欄や「X」などでいつでもメッセージを承っております。お気軽にどうぞ!